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2010年9月16日 (木)

メリエスの奇跡

もう1年以上前にアメリカから買ったジョルジュ・メリエスのDVDボックス全5枚を、夏休みにようやく見た。メリエスは500本以上の作品を作ったが、そのかなりが失われていた。世界中のフィルム・アーカイヴがあちこちで発見していたものを集めたもので全173本、13時間以上の内容だ。

前にも書いたがこれまでメリエスのDVDは、メリエス家の抵抗もあって、ビデオやDVDでは20本くらいしか見られなかった。だから今回のボックスは画期的である。今回これらを製作順に見て思ったのは、とにかく初期がおもしろいことだ。
1896年くらいから作り始めたメリエスが、独自の世界を完成するのは1900年頃。『一人オーケストラ』(1900)は、一人で七人の楽隊を演じるもので、1本のフィルムをマスキングしながら7回にわけて撮影している。『不思議な分裂』(01)は、両手両足が体を離れ、勝手に動き出すもので、これも画面を分割して何度も撮影しているはずだ。『ゴム頭の男』(01)は、頭に空気を送り込むとどんどん膨らむもので、自分が貨車に乗って近づいてくるのを撮影している。『音楽狂』(02)では楽譜に自分の頭を投げて次々に音符にしてゆくというもの。
カメラが動かない時代に、メリエスはフィルムを分割して何回も撮影したり、映るものを動かしたりしながら映像に動きを出している。すごいのは、そこに自らの身体を分解して、その動きをマジックの基本に置いていることだ。いくつもの自分の顔を同じ画面に見せて喜劇を作った監督は、たぶんその後もいない。

意外におもしろくないのが、『ドレフュス事件』(1899)『シンデレラ』(99)『青ひげ』(1901)のような物語がしっかりしたもの。これはメリエスの一人芸でなくなり、重苦しい劇になってしまう。『月世界旅行』(02)でさえも、人の顔になっている月にロケットが飛び込むシーンなどは楽しいが、全体として妙に重たく感じられる。

先日ある友人と話していたら、このボックスに加えて、さらに1本の追加DVDが発売されたらしい。最近発見されたものや断片が26本入っているようだ。これで計199本。
もっと驚いたのは、そのDVD6本が日本でも紀伊國屋書店から発売されるというニュースだ。このDVDが出たのはこれまでアメリカとフランスだけだから、たいしたものである。さて日本で何本売れるのだろうか。

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