岩波ホールにピッタリ過ぎる映画
12月4日公開の『クレアモントホテル』を見た。若い頃だったら好きな映画ではなかったと思う。老年に達した女性がロンドンのはずれの長期滞在用ホテルに現れる。そこで見る老人たちの人間模様。そんな「グランドホテル」形式の映画は昔は苦手だったが、今となってはそれも悪くない。
主人公のパルフリー夫人を演じるのは、ジョーン・プラウライト。その演技のひとつひとつは、まるでフリ仮名がふってあるようにわかりやすい。ホテルに住むほかの老人たちも同様だ。パルフリー夫人の行動をそっとうかがい、思わず口を出してしまう。
そんな日々のなか、夫人が出会ったのが、小説家志望の貧乏な青年。これが絵に描いたようなハンサムでいい奴で、ホテルのみんなのあこがれになってしまう。
夫人が好きな映画は『逢びき』。その映画を知らなかった青年はこのDVDを借りようとしたことがきっかけで、新しい女性と知り合う。あるいは青年は夫人にワーズワースの詩を暗唱し、二人は打ち解ける。
出てくる人々、起きる出来事、引用される映画や文学、そしてその描き方を含めてすべてが昔風で、最初はちょっと鼻についたが、見ているとこれもいいかと次第に心がなごむ。
公開されるのは岩波ホールだが、ちょっと客層にピッタリ過ぎるのではないか。あんな風に家族とは離れて、一人で小さなホテルで暮らしてみたいと思っている60代や70代の女性は日本にも多いような気がする。高齢者の間でちょとしたブームになるかもしれない。
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