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2010年10月30日 (土)

東京国際映画祭:その(4)チラシの文句に誘われて

東京国際映画祭で上映される作品は、劇場公開直前のメジャーな映画を中心とした特別招待作品を除くと、全く知られていない監督や俳優の作品が多い。有名な監督のワールド・プレミアは他の映画祭のコンペに取られてしまうからだろうが、それにしても目玉のはずの「コンペ」や「アジアの風」の作品は地味だ。そんな中で見る作品を選ぶとなると、いきおいチラシの数行に頼ることになる。

「アピチャッポンに続くタイ・アートシネマの旗手」という言葉にひかれて見たのが、アーティット・アッサラット監督の『ハイソ』。アメリカ留学帰りのタイの俳優アナンダを追って、撮影現場にやってくるアメリカ人女性ゾーイ。ゾーイは不満が溜まって帰国し、アナンダは地元の女性と住み始める。映画はその日常を繊細なカメラで淡々と追っていくだけだ。大きなドラマはないが、まるでソフィア・コッポラの映画のように、女たちはまわりの環境との適応の度合いを見つめ続ける。アピチャッポンのような天才ではないが、かなりおもしろかった。

もう一つは、「ペドロ・コスタと比較すべき作家では?」と書かれていたマレーシア出身のシャーマン・オン監督がタンザニアで撮った『燃え上がる木の記憶』。こちらは次から次に人々が出てきてボソボソと話し出すが、30分ほどたってもペドロ・コスタらしいところは一向に現れないので、途中で出てしまった。

『わたしを離さないで』は、チラシの文面ではなく、カズオ・イシグロの原作が好きだったので見た。映画は原作に忠実に、かつ丁寧に撮られていて、俳優もピッタリだ。脇役のエミリー先生としてシャーロット・ランプリングが出てきた時はどきりとした(2度目に出てきた時はもっと驚いた)。
しかし何かが足りない。原作にはどこかSF的な作りものの感じがあったが、映像にしてしまうといかにもありそうな、英国の70年代や80年代のノスタルジックな風景に見えてしまう。
これはコンペの作品だが、この映画や『サラの鍵』などは、ほかのコンペ作品に比べるとずいぶんわかりやすい、メジャーな内容だ。アメリカやフランスの適度にメジャーな作品に、マイナーな国の地味な秀作を加えるというセレクションのバランス感覚は、どこか違うような気がする。

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