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2010年10月27日 (水)

東京国際映画祭:その(3)六本木に寒風が舞う

急に寒くなった。とりわけ六本木ヒルズはビル風が強く、上映後外に出ると思わず震え上がる。
とにかく居場所がない。東宝シネマズの狭い廊下をうろうろしていると、まるでネズミになったような気分になるので外に出る。やっと見つけたプラスチックの椅子に座っていると、風が強くて震えてくる。ようやく上映時間になって、またネズミ小屋のようなシネコンに戻る。それを繰り返しながら中盤の2日間で4本見た。

『そして、地に平和を』(イタリア映画、コンペ)は、ローマ郊外の若者たちの現在を描いたドラマだ。刑務所から5年ぶりに帰ってきた30代の男とその友達。金もなく、暇を持て余す20前後の若者3人。そしてカフェでバイトを始める女子大生。その3つがいつのまにか絡み合い、悲劇が生まれる。
丁寧に撮られた力のある映像だが、3組が絡み合うまでに1時間もかかるし、その分物悲しいバロック音楽に頼り過ぎだ。もっと脚本を書きこめば、それなりの秀作になっただろう。

『ハンズ・アップ』(フランス映画、ワールドシネマ)は、ロマン・グーピルの監督作品でフランス人の友人に勧められて見た。ロマン・グーピルと言えば、ゴダールの助監督などをしていたと思うが、すいぶん前に『30歳の死』をパリで見た。まだ元気だったのかと思ったが、これが期待以上におもしろかった。
本国に強制送還されようとするチェチェン出身の女の子ミラナを引き取った家族の話だが、子供たちの演技がまるでドキュメンタリーのようにリアルで抜群だ。明らかに子供の視点で勝手に動き出し、自分たちのファンタジーを作り出す。そのうえ母親を演じるヴァレリア・ブルーニ=テデスキの、いつもながらの不思議な存在感がこの映画に厚みを出している。
少年のブレーズとミラナが窓の外の雨垂れを見ながら語る場面や、テレビで娘に向かって話すミラナの母親、そしてラストの、両手を挙げて行進する子供たちなど、いくもの記憶に残るシーンがある傑作だった。これは劇場公開できると思う。

『心の棘』(フランス映画、ワールドシネマ)は、『エターナル・サンシャイン』などで有名なミシェル・ゴンドリー監督が、82歳の自分の叔母を撮ったプライベートなドキュメンタリーだ。あちこちの学校で教えた叔母が生徒を訪ね歩く。淡々と撮られたドキュメンタリーだが、叔母の力強い生き方が次第に伝わってきて好感が持てた。とりわけゲイになってしまった息子に対する思い(彼女は「息子は心の棘よ」と言う)や、息子の話の部分が一番おもしろかった。

『鋼のピアノ』(中国映画、コンペ)は、ジャ・ジャンクーやワン・ビンの描く世界を、無理矢理に娯楽B級映画にしたような奇妙な作品だった。娘のために廃工場で仲間たちとピアノを作ってしまう話だが、途中から演出の意図が見えすぎて最後まで見るのがつらかった。いろいろな才能が出てくる元気な中国を表す一本ではあるが、これがコンペというのはどうか。
上映後、ある映画評論家に、この映画の主人公に似ていると言われて軽いショックを受けた。

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