« 小説家アンヌ・ヴィアゼムスキー | トップページ | 森ビル全面広告の不愉快さ »

2010年11月 9日 (火)

アメリカの神話に挑むアン・リー

普通アジア系の監督は外国を描いても自国の要素を入れる場合が多いが、アン・リーは純アメリカ的なテーマにも平気で取り組む。カウボーイの同性愛を描いた『ブロークバック・マウンテン』がそうだったが、今回の『ウッドストックがやってくる!』は、何とアメリカの伝説的なコンサートの舞台裏を撮るというものだ。アメリカの神話の一つに挑んで、アメリカ人にもできなかった映画作りに成功しているからすごい。

既に『ウッドストック』という同時代に作られたドキュメンタリーがあった。そしてその時代を生きていた人々が、アメリカを始めとして世界中に生きている。そのなかでアン・リーが取った戦略は、ウッドストックを誘致する青年エリオットを中心に地元の人間の観点から祭典を描くことだった。

実際、この映画ではジョーン・バエズやジャニス・ジョップリンたちの音楽は遠くには聞こえるが、彼らの姿は見えない。映画は、どんどん増えて収集がつかなくなる若者たちと、困惑する地元の人々や混乱した事務局の人々を見せるだけだ。何千人のエキストラを使ったのかわからないが、それまで草原だったところに、どこからか湧いて来たように突然無数の若者が集うさまは圧巻だ。本当にここで革命が起きるのではないかという気さえした。それが例のドキュメンタリーと同じく、マルチ画面で展開する。

お金に執着する母親や、なぜかそんな母親が好きな父親を始めとして、偏屈な地元の人々の存在も物語を楽しくしている。
祭が終わり、ゴミの山が残る。そこでエリオットは「ビューティフル」とつぶやき、馬に乗って故郷を去る。西部劇みたいだ。終わるのが惜しいくらい、何とも楽しい映画だった。

監督主義プロジェクト(!)の第一弾として1月15日から公開。このあとにコーエン兄弟とサム・メンデスが続く。

|

« 小説家アンヌ・ヴィアゼムスキー | トップページ | 森ビル全面広告の不愉快さ »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/49975062

この記事へのトラックバック一覧です: アメリカの神話に挑むアン・リー:

« 小説家アンヌ・ヴィアゼムスキー | トップページ | 森ビル全面広告の不愉快さ »