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2010年11月27日 (土)

ミシュランガイドの大いなる誤り

また今年も「ミシュランガイド東京」が今日から発売される。正確に言うと、今年から横浜と鎌倉が加わった。ネットには星を取った店がすべて並んでいるので、わざわざ2520円を出して買う価値はないだろう。なぜならば本を買っても写真が多く、解説文は日本語として拙劣だからだ。

ミシュランはジャン=リュック・ナレ氏が責任者になってからといいもの、特に欧州以外では従来の短い文章と記号で「行間を読ませる」ことをやめ、掲載店を減らしてビジュアル中心にした。東京版や関西版はその最たるものだが、問題はそこにはない。

最も重要なことは、「ミシュラン東京」は、日本の外食事情に合わせようとして、根本的に失敗したということだ。日本の事情とは何かといえば、大衆が気楽においしいものを外で食べるという文化だ。フランスのミシュラン掲載店に行って見れば、1つ星でも相当の高級仕様なのに驚く。値段はさておき、ゆっくりとしたスペースをあけて、十分なサービスを施す。そんな店は日本ではいくつかのフランス料理店か、高級料亭か高級ホテル内の店しかないだろう。

そこで日本では「皿の上だけ」というポリシーを作った。3つ星は、相当に洗練された味に加えて、従来からミシュランが重要視してきた極上のサービスを提供する店を14店選んだから、まだわかりすい。問題は2つ星や1つ星で、これは「皿の上だけ」と称して、何でもアリになってしまった。東京のミシュラン2つ星のフランス料理店に行って、「これはパリの星なし並みのサービスだ」という人が多いのはこのためだ。

2つ星や1つ星で掲載されている店は252店だが、「皿の上だけ」ならば同じレベルの店は東京に最低でもその5倍はあるだろう。選ばれた店を見ると、おおむね「東京に長く住む不良外人が好きそうな店」が多い。料理の種類で言うと、フランス料理と和食に手厚く、イタリア料理と中華には冷たい。
そのあまりの恣意的な選択に、2007年秋に最初に出た時から大騒ぎだった。いま落ち着いて考えてみると、日本に合わせて「皿の上だけ」としたところが間違いだったのではないか。そんなことをしたら、外食文化の層が欧州の何倍も厚い日本には、良い店は何千とある。そこを不良外人基準で遮二無二選択して、結果としてかなり無茶なリストを作ってしまった。

それを考えると、一般の日本人へのアンケートをベースに1328店を収録した「ザガット」は、そうした日本の事情に妙にあったガイドだと思う。もう少し増やして2000店くらい選べば、「ウチの近くの実はうまい店」まで網羅できるのではないか。
こちらのガイドに写真はないが、1785円と安い。ネットに個人が写真をアップする時代に、誰がミシュランのような大判の写真を喜ぶだろうか。

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