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2010年11月 2日 (火)

飛行機で田中角栄について考える

急に海外に行くことになり、本屋に飛び込んで本を数冊買ったが、飛行機で最初に読んだのは保坂正康氏の新書『田中角栄の昭和』だ。自分の小さい頃から大学生くらいまで、最も記憶に残る政治家は田中角栄だった。この政治家には何か昭和期の日本を象徴するものを感じていたので、思わず手に取った。

まず出だしで驚いた。今の民主党には田中角栄に通じる点が三つあるという。一つは人間の幸福感を物量による尺度においていること。二つ目はリベラルな思想。歴代首相で天皇とは最も距離を置いていたし、アメリカとの従属関係も嫌い、将来を見越して中国との関係を深めた。三つ目は金権政治。金の力で自分に従わせた。鳩山と小沢の手法はそれらを受け継いでいると書く。

小学校しか出ておらず、戦前の日本で20歳そこそこで会社を経営し、軍にも入り込んで財産を作る。戦後は土建業で稼いだ後に29歳で衆議院議員となり、39歳で郵政大臣。54歳で首相になり、「日本列島改造論」を書く。日中国交正常化を成し遂げたと思うと、56歳の時に立花隆氏が『文芸春秋』に書いた「田中角栄研究」によって金脈政治を批判されて内閣総辞職。そして58歳の時にロッキード事件が発覚し、長い裁判の後に有罪判決を受ける。それから亡くなるのが75歳、1993年のことだ。
彼が総理を務めたのは、わずか2年5カ月というのは意外だった。それからずっと田中支配とロッキード裁判が続いていた。「三木おろし」とか「田中曽根内閣」などという流行語があった。当時は日本人の嫌な部分をえんえんと見せられているような気がしていたが、今考えると彼の欲望充足型の生き方は昭和の日本そのものであり、自分の人生観の一部のような気もする。

終わりに保坂氏は書く。
「国民の欲望そのものを、田中は代弁していたのである。信念や理念より目に見え手にとることのできるカネやモノに信頼を寄せる国民の心理的、文化的レベルを、田中は正直に私たちに見せつけたのであった。田中は時代によってつくられたが、次には田中が時代をつくる役を演じた。しかし次に国民は田中を捨て去り、自らは「田中角栄」という固有名詞と一線を画する側に立ったのである。その巧妙さが戦後社会の大衆の姿であった」。

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