学生の就職率に思う
10月1日時点の大学四年生の就職内定率が57.6%だというニュースが流れている。これは1996年に調査を始めて以来最低らしい。これはいわゆる「ロス・ジェネ」世代を生んだ就職氷河期の2000年前後より、ずっと悪い数字だ。就職できない若者はいったいどうなるのか。
今後仮に好況になっても、日本において採用人数が大きく増えることはないだろう。なぜなら現代の資本主義は正社員を減らすようにできているからだ。まずテクノロジーによって銀行でも地下鉄でも、窓口の単純労働はずいぶん減った。さらにグローバリゼーションに打ち勝つための国際競争力を高める手段として、正社員の代わりに派遣やアルバイトを増やし、さらに工場を途上国に移転した。
このまま自然に任せていたら、先進国では若い人に仕事はなくなる一方だ。
2週間ほど前の日経新聞で、国際交流基金理事長の小倉和夫氏が「3年生の間に採用活動をしない企業には、法人税を減税したらどうか」と提案していた。ずいぶん大胆な意見だが、これくらいやらないといくら紳士協定を結んでも意味がない。日経新聞は採用活動が立派な企業をランキングを作って表彰したら、とも提案していた。
採用活動の早期化が大学教育をおろそかにしている、という意見にはもちろん賛成だが、それでは根本的な解決には結び付かない。
「ベーシック・インカム」という考えがある。収入のない人に最低限度のお金を与えるというもので、生活保護の現代版だ。最近では経済学者の中にもまじめにこの導入を唱えている人がいる。しかし大学で日々若者に接していると、彼らが求めているのはお金をもらうことではなく、仕事が欲しいということがよくわかる。アルバイトではなく、責任を持たされてやる仕事が欲しいのだ。
少し前の朝日新聞では論壇面への投稿で、売上げに比して雇用者の多い企業に減税をする案を挙げている会社員もいた。もはやこうした社会主義のような仕組みが必要なのではないか。
多くの企業の40歳以上で、たいした仕事をしていないのに、給料をもらいすぎている人は多い。思いつきだが、年収が1000万円以上の社員の数に応じて法人税の追加課税をしたらどうかと思う。1500万、2000万と高い給料の社員が増えれば累進課税をする。
そうすれば企業は給料を安くせざるをえない。その結果生まれた余剰金で若い人を雇えばいい。給料の減った40歳、50歳にはもっと休暇を義務づければ、観光やレジャー、文化産業の促進にもつながる。
そうやって日本は経済成長を第一目標としない、住みやすい、優しい国として生きるしかないのではないか。
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