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2010年11月17日 (水)

女王ドヌーヴの本音発言

フランスに"Les inrockuptibles"という週刊誌がある。かつてはロック中心の月刊誌だったが、15年ほど前から週刊誌になって、映画や美術、政治なども大きく扱う。特にインタビューがおもしろい。先日バルセロナに行った時の乗り換えのパリで買った最新号に、カトリーヌ・ドヌーヴのロング・インタビューがあり、その本音の発言に驚いた。

この779号は、表紙がドヌーヴの写真で「名誉なんていらない」と大見出し。インタビューは9ページで、ボリュームたっぷりだ。いくつか拾ってみる。

彼女はかつては女性監督が少ないのが気になったが、今は俳優が映画を取る例が多すぎると言う。「そこそこ映画になることもあるけど、本当に意味のある映画は少ない。映画というのは物語を語って丁寧に撮影すればいいというものではない」「私もいつも監督をしないかと誘われる。技術的にはある程度できると思うけど、あまりやる気がしない。一本の企画に長い間没頭するなんて、私には合わない」。

オリヴェイラについて。「威張っているわ。でも結局は彼のやり方、世界に入り込みたくなってしまう」「威張っている監督がいい時もある。力を感じさせる人が好きなの」「私は女優だから、演出されるのが好きなの。頑固な監督も気にならない。逆に迷っている監督もいい」。

彼女はフランスの評価の高い監督の大半と仕事をしている。フランソワ・トリュフォー、ジャック・ドゥミ、ルイス・ブニュエル、アラン・カヴァリエ、フィリップ・ガレル、レオス・カラックス、アルノー・デプレッシャンなどなど。アラン・レネとゴダールと仕事をしていないことに関しては、「レネは演劇のベースのある女優が好きだから、私はふざけているように見えるかもね(笑)」。ゴダールとは企画があったのに流れたのが残念だという。「彼は本当に俳優をうまく撮る監督だから」と60年代のベルモンドやアンナ・カリーナを挙げる。

日本でも現在上映中の『隠された日記』に出ているし、もうすぐ始まる『クリスマス・ストーリー』や『しあわせの雨傘』でも出ていて、相変わらずの存在感だ。特に『しあわせの雨傘』のドヌーヴは抜群で、彼女の代表作と言えるだろう。

一度東京で、彼女との夕食会の席の端の方にいたことがある。大好きなすしや海老の天ぷらをマイペースで食べていた。みんなを無視するでもなく、気を遣いすぎることもなく、極めて自然体だった。あえて知性を見せない、ちょっと鈍感に見える感じがいい。

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