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2010年12月23日 (木)

何でもありの『冷たい熱帯魚』

1月29日公開の園子温監督『冷たい熱帯魚』をようやく見た。9月のベネチア国際映画祭で見逃し、11月の東京フィルメックスでも日程があわなかった。とにかく評判がいい。師走も押し迫ってようやく駆け込んだ試写室は、上映15分前には満員になった。そして、確かにおもしろかった。

何がおもしかったかというと、何でもありのアナーキーな破壊力だろう。でんでんの何かが乗り移ったような過剰な演技は、最初はおかしいのだが、次第に恐ろしくなる。彼につられておかしくなってゆく周囲の人々。その正常から異常への移行は、実にリアルに克明に描かれている。

喜劇と悲劇、リアルとシュールが入り混じり、そのうえ全体に妙なエロスが溢れている。そして後半は思いもよらぬ流血のスプラッタへと展開する。最後まで誰が生き残るかわからない展開。

その混沌を引っ張るのは、役者たちのまるで地のように見える迫真の演技だろう。驚異的なパフォーマンスのでんでんを始めとして、まじめなパパがおかしくなる役の吹越満、あやしい夫人役がピッタリの黒沢あすかに、不満が溜まった淫靡な妻役の神楽坂恵、そして本当にヤクザ弁護士みたいな渡辺哲。
彼らがまるで即興のアドリブで勝手に動き、話すように見える演出は、見事としかいいようがない。登場人物全員に映画の「悪」が乗り移ったようで、見ているとこちらの頭もおかしくなりそうだ。

今年見た日本映画の中でも最高の一本だろう。しかし、あえていうと、本作の遊びに近いアナーキーなパワーよりも、個人的には『ヘヴンズ ストーリー』が極める精神性の方がずっと好きだが。

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