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2010年12月15日 (水)

「一番好きな映画は」と聞かれて

最近、大学以外で講演やレクチャーをすることがたまにある。そんな時、相手がナイーブであればあるほど、出てくる質問がある。「そんなに映画をたくさん見ているのなら、一番好きな映画は何ですか」。話の内容とは関係なく、これが出てくる。先日、福岡で高校生相手に話をした時も、まず最初の質問がこれだった。

予期していなかったので一瞬困ったが、「今年見た映画では『13人の刺客』がおもしろかったです」とごまかした。これなら高校生でも聞いたことがあるだろう。まさか『ヘヴンズストーリー』とか『溝』と言うわけにもいかないと思ったからだ。そしてこれだけでは馬鹿にされると思い直して、「古い映画だと、ちょうど故郷に帰ったばかりなので、小津安二郎の『東京物語』です」と答えた。教育的な配慮もある。

普段映画を見ている時は、一番好きな映画なんて考えない。そういう絶対化はどこか違う。中学生の時に見た『ジョーズ』は言葉にできないくらいおもしろかった。大学生の頃、恋人と見たゴダールの『軽蔑』は、本当に感動した。でもこれまでで一番というのはちょっと違う。たぶん恋愛と同じで「その時はそう思った」というくらいか。

毎日のように映画を見る。その時にいいとか悪いとか思う。一年間で記憶に残った映画は挙げられるが、それさえも順序は難しい。ましてや生涯ベストテンなんて出てこない。フィルムセンターの岡島尚志氏が、朝日新聞のGLOBEのインタビューで、「一番好きな映画を教えてください」と言われてこう答えていた。以下はアサヒコムからの貼付け。

「1本? この世に映画が何本あると思ってるのか」と、不機嫌になった。ならば3本ではと食い下がると、しぶしぶ答えた。「39年のジャン・ルノワール監督『ゲームの規則』。55年の成瀬巳喜男監督『浮雲』。56年のジョン・フォード監督『捜索者』。ただし、いま思ったものという条件付きで。順不同です」

今後、ナイーブな相手に講演をする時には相手に応じて「とりあえずのベストワン」を考えておこう。できたら今上映中の映画から1本、今年のナンバーワンを1本、古典から1本くらい考えてくといいかもしれない。

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