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2010年12月22日 (水)

食料自給率の謎

なぜか、「食料自給率」という言葉は妙に気になる。長年、日本の自給率は低いと言われてきたからかもしれない。戦争が起こったら、日本は食べるものがなくなる、みたいな論理にはどこか抵抗があった。そんな時に浅川芳裕著『日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率』という新書を見つけて、買ってみた。

その本の趣旨は、日本は世界5位の農業生産額を誇る農業大国なのに、農水省は自らの権益を守るために日本の食料自給率が低いことを根拠のないデータで示し、同時に農業を補助金漬けにしてダメにしている、というものだ。あまりに一方的なものの言い方なので、読んでいてそうばかりではあるまい、という気にはなるが、興味深い指摘も多かった。

まず「世界最大の食料輸入大国」ということについて。日本の食糧輸入総額は、米国、ドイツ、英国を下回り、一人あたりの輸入額や輸入量では、英国、ドイツ、フランスを下回るという。
自給率41%という数字は、その分母に国内で市場に出ながら廃棄される食料(1/4以上)も含まれているからだという。さらに逆に分子には200万戸以上の自家用生産や3割にもなる市場に出ない廃棄農産物が含まれていないと言う。
そもそもこの自給率は、日本のみが使っているカロリーベースらしい。だからスーパーに行っても野菜の大半は日本製だが、カロリーは低いので自給率にはあまり反映されない。確かに肉や魚は外国ものが増えた。すごいカラクリだ。

そのほかにも農水省批判のオンパレードだが、この筆者が「こうすればもっと強くなる日本農業」として挙げている8つのアイデアに妙に笑ってしまった。
第一は、なんと「民間版市民農園の整備」。私自身、妙に農業がしたくて自宅の近くで探したが、公的な農園は近くになかった。確かに都会の会社員には魅力的だと思う。かなりのマーケットに成長する可能性があるし、それ以上に人間の生き方に与える影響は大きいと思う。
第二は、「農家による作物別全国組合の設立」。日本ではすべて地域の農協単位なので、とりわけ輸出において無駄が多いらしい。米国のポテト協会の例が挙げてあってそうかなとも思う。
第三は「科学技術に立脚した農業ビジネス振興」?ピンとこない。第四は「輸出の促進」でその後は第八まですべて海外関係だ。

とりあえず、普通の人があまりお金をかけずに空いた時間で農業をできるようにすること、これはすばらしいことだと思うのだが。

この本が今一つ信憑性を欠くのは、その強引すぎる論理にもよるが、カバーの裏にある著者の写真にもよるところが大きい気がする。ちょっと怪しい感じなのだ。

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