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2010年12月 9日 (木)

シャブロルを知っていますか

フランスの映画雑誌『カイエ・デュ・シネマ』の10月号の表紙は、葉巻をくわえて正面を睨むギョロ目のシャブロルの顔写真に「シャブロルを知っていますか」という見出しだった。今年は1月にエリック・ロメールが死に、9月にクロード・シャブロルが亡くなった。ロメールの時は日本でも新聞各紙に死亡記事の数日後に追悼文が並んだが、シャブロルは追悼文はなかったように思う。

「日本ではシャブロルは知られていない」と思っていたが、『カイエ』の書き方だとフランスでもそういう感じはあるのだろうか。この世代にしては作品数は多い。テレビ用作品を入れて75本で、うちテレビが17本。1958年から毎年1本以上撮っている。だから「作家」としての有難味が少ないのだろうか。あるいはシャブロルはある程度当たるところも「作家」と見なされなかったのか。

ほとんど公開されなかった日本の事情はちょっと違う。実は1980年代まで1本も劇場公開されなかったロメールに比べて、シャブロルの紹介は早かった。58年の初長編『美しきセルジュ』と『いとこ同士』は日本でもすぐに公開された。トリュフォーの『大人はわかってくれない』とゴダールの『勝手にしやがれ』と並んで、ヌーヴェル・ヴァーグの代表作として。
しかしほかの二人と違って、その後のシャブロルはほとんど公開されていない。ゴダールもトリュ―フォーもどんどん新作が日本に来た。紹介が遅れたロメールでさえも80年代半ば以降、立て続けに公開されたのに、シャブロルはほとんど見られなかった。相当の映画好きでも、最初の2本以外を見た人は少ないだろう。

私が同時代的に見て、記憶に残っているのは以下の作品だ。
『チキンのヴィネガー風味』(84)『主婦マリーがしたこと』(88)『ヴィシィ―の目』(93)『沈黙の女/ロウフィールド家の惨劇』(95)『何もうまくいかない』(97)『ココアをありがとう』(00)『石の微笑』(04)。
たぶん半分は海外で見た。どれも時間のたつのを忘れるくらいおもしろかった。特にイザベル・ユペールが出てくる映画は最高だ。『何もうまくゆかない』の詐欺師役なんて、今でも顔つきを思い出す。
それにしても、10本もない。もっと見たい。今年の東京国際の『ベラミ』はチケットが取れなかったし。

シャブロル映画を日本語字幕付きで何本も見られる日は来るのだろうか。東京フィルメックスや日仏学院などで特集をしたアモス・ギタイをやるより、何倍も重要だと思うのだが。

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コメント

シャブロールに関する事実誤認について

いつも楽しく拝読しています。クロード・シャブロールに関して、"風景"氏の文章にいささか事実誤認が見受けられたので、記したいと思います。
 まず、「美しきセルジュ」ですが、同作が日本で正式に劇場公開されたのは1999年で、確か、ザジフィルムズの配給、公開劇場はキネカ大森でした。80年代くらいまでは、日仏学院やアテネフランセで英語字幕の16ミリ・プリントが上映されており、私は80年代半ばにアテネフランセで行われたシャブロールの特集上映で見たと思います。ちなみに、この頃、同作は「素晴らしきセルジュ」という題名で知られていました。
 そして、60年代のシャブロールですが、第3作の「二重の鍵」がミステリーもので、それ以降も、スパイ・アクション「虎は新鮮な肉を好む」「スーパータイガー/黄金作戦」二部作、「ジャガーの眼」、「殺意」「女鹿」の2本のミステリーが公開されたため、サスペンス、ミステリーの監督というイメージが定着してしまい、トリュフォーやゴダールに大きく水をあけられたという印象がありました。70年代は、フランス映画が入って来なかった世相を受けて、公開は「交換結婚」のみ。80年代以降、ミニ・シアターの隆盛に伴い、「ボヴァリー夫人」や「主婦マリーがしたこと」等、何本かの作品が公開されました。中には佳作もありましたが、飛び抜けた評価を得られた作品はなく、ミニシアターで作品が公開された多くのフランスの監督の一人というイメージを与えただけでした。
 ただ、70年代以前の作品では、「虎は新鮮な肉を好む」が2006年、フィルムセンターで行われたフランス映画の回顧特集で、「二重の鍵」と「善良な女たち」(同作は「気のいい女たち」の題名で東和配給で公開予定でしたが結局公開されず、その時のフィルムが残っていたのか、80年代前半に旧フィルムセンター(火事の前です)で行われたフランス映画特集で上映されました)の2作は、1996年デラ・コーポレーション配給で、アキム兄弟特集の一環として、丸ノ内シャンゼリゼにてリバイバル上映され、そのフィルムは デラが解散した後も、権利がコムストックに移管され、最近までシネマヴェーラ等で上映されていました。"風景"氏も、みようと思えば、見られた筈ですが……。
 さて、ここで、"風景"氏に苦言です。海外の文献等に当たるのは結構ですが、"風景"氏の世代の映画ファンなら誰でも知っているような日本でのシャブロールの監督としての位置づけや作品の上映状況を調べるプロセスをすっ飛ばすのはどうでしょうか?それらを正確に把握してこそ、日本での上映促進に関しても、示唆に富んだ意見を言えるのではないでしょうか?上から目線で、新聞、その他の文章に檄を飛ばすのも結構ですが、たまには、自分の足元もしっかりと確認されてはどうでしょう。
 以上、乱文、乱筆にて失礼いたします。

投稿: heikichi1959 | 2010年12月10日 (金) 01時08分

そんなに目くじらを立てることもないような…
単に『美しきセルジュ』と『二重の鍵』を取違えただけなんですから。ちなみに1984年6月のアテネ・フランセ文化センターでのクロード・シャブロル特集の際には『美しきセルジュ』の題名で上映されていますよ。

投稿: okatae | 2011年2月 5日 (土) 18時55分

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