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2010年12月21日 (火)

『お家をさがそう』の心地良い普通さ

サム・メンデスと言えば、突然アカデミー賞の作品賞や監督賞を取った『アメリカン・ビューティ』(99)に始まって、『ロード・トゥ・パーデション』など力のこもった映画作りで有名だ。ところが今度の新作、『お家をさがそう』は拍子抜けがするほど何も起こらない映画で、その普通さが妙に心地よい。

30代半ばのカップルは予期せぬ子供ができることになったが、ひょんなことから旅に出て北米じゅうを回って自分の家を探す、というのがストーリーだ。住んでいたのはコロラド州で、アリゾナ州のフェニックスやツーソン、ウィスコンシン州のマディソン、カナダのモントリオール、フロリダ州マイアミ、そして最後はサウスカロライナ。

アメリカの地理に疎い自分にはいったいそれぞれがどこにあるかピンとこないが、チラシの地図で見て見ると、本当にアメリカの端から端まで旅している。彼らが出会うのは、一見普通のカップルばかりだ。突然ベルギーに移住すると言いだす風変わりな両親に始まって、異様に無口な子供二人を持つカップルや、神秘主義にかぶれたカップルなどみんなちょっとおかしいが、憎めない人々ばかり。

チラシには「珠玉のロードムービー」と書かれているがちょっと違うかもしれない。主人公は、人は良いが世間知らずの男と、強い自分を持つ黒人系の女性のカップルでどこにでもいそうだ。そして彼らは何かを探しているのではない。そもそも全くお金に困らず、家族や友人たちを楽しんで訪問している。そのうえ、二人は愛し合っていて、恋愛の危機もない。かつての「ロードムービー」のせつなさや危機感とは無縁だ。

そして最後は何の苦労もなく、自分たちの家を見つける。さまざまなカップルを見た後に、自分たちの場所を見つけるのだ。えっ、これでいいの、と言いたくもなるが、そこには国を超えた現代風な安易さが漂っていて、妙に気持ちがいい。
あまり有名な役者を使わず、普通のアメリカ人たちの愛すべき生き方を淡々と見せる。そして観客にはいつの間にか自分の物語に見えてくる。現代人の共感を呼びそうな映画で、やはりサム・メンデスはうまい。
3月19日公開。


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