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2010年12月17日 (金)

映画史の叢書が続々(と書くと新聞の見出しみたいだが)

最近、ミネルヴァ書房刊で加藤幹郎氏監修の「映画史叢書」の第一巻として、杉野健太郎氏編『映画とネーション』が送られてきて驚いた。開いてみるといわゆる映画をめぐる研究論文ばかりだ。これが全10巻出るという。そういえば、最近こういう叢書が増えてきているような気がする。

目立つのは岩波書店刊の「日本映画は生きている」シリーズ。『アニメは越境する』など全8巻でもう6巻まで出ている。編者は4人いるが、どうみても中心は四方田犬彦氏だろう。岩波では20年ほど前に佐藤忠男氏が中心になった「講座 日本映画」があったが、またこういうものが出るとは、映画のシリーズは売れるのだろうか。

さらに学術色が強いのが、森話社刊の「日本映画史叢書」。『映画の中の天皇』などハイブロウな題名が並んでいる。こちらの中心は岩本憲児氏のようだ。これはもう13冊も出ていて、まだまだ出るらしい。

もう少し一般向けのシリーズが、前にここで紹介した「紀伊國屋映画叢書」。『イエジー・スコリモフスキー』『ビクトル・エリセ』『ヌーヴェル・ヴァーグの時代』の3冊が出ている。中心となっているのは前にエスクァイアマガジンジャパンで「E/Mブックス」という映画本を編集していた遠山純生氏だ。一般向けでも、3冊ともずいぶん渋い。

私の知る限り、映画の本は売れない。映画本の老舗、フィルムアート社はIT系の会社に買収されて迷走中だし、90年代に「リュミエール叢書」という映画シリーズを出していた筑摩書房も、映画の本は出さなくなった。なのに今頃になって、何が起こったのだろうか。

確かなことは、この20年で映画を教える大学がどんどん増えて、映画史の研究者は増え続けているということだ。加藤氏や四方田氏や岩本氏は弟子たちに書く場を与えるために、叢書を企画するのかもしれない。それを受ける出版社があるのも驚きだが、いったい読者はいるのだろうか。あるいは大学で教科書として使うから一定数売れるのだろうか。

日本の映画産業は相変わらずの不況で、この40年間、興行収入ははほぼ2000億円前後を行き来している。シネコンが増えてスクリーン数だけは増加の一途だが。外国映画の配給本数はこの数年ですいぶん減った。字幕を読みたくない世代が増えている。DVDは数年前から売れ行きがどんどん落ちている。
そんな中で大学で映画の授業が増え、映画史の研究者が育ち、難しい映画研究書がどんどん出る。奇妙な二極化の時代になった。

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