「孤族の国」とか「無縁社会」とか
年末になって、朝日新聞で「孤族の国」という連載が始まった。何も最も孤独を感じる年末にやらなくてもと思うが、気になって毎日読んでいる。そんな時にNHKのドキュメンタリー『無縁社会』が本になったので、買ってみた。この番組が話題になっていることは知っていたが、一度も見たことがなかった。しかし本を読むだけでも深刻さは伝わってくる。
第一章に「行旅死亡人」という言葉が出てくる。これは朝日の「孤族の国」でも使われた言葉だ。「警察でも自治体でも身元がつかめなかった無縁死のこと」らしい。NHKの調査では1年間で3万2千人という。この人々は官報に数行で情報が載せられるだけだ。
NHKの記者は、自宅で死んだ氏名不詳の死人の跡を追いかけ始める。聞きこみの結果、名前がわかり、二十年間勤めた職場がわかり、最後に故郷がわかる。秋田で建具職人として暮らしていたが、友人の連帯保証人になって財産を失い、妻子と別れて東京の給食センターで一人で働いていたという。そして定年退職後も日雇いで工場で働き、毎年両親の供養料を寺に送っていた。そして73歳でアパートで死に、一週間後に発見されて「行旅死亡人」となった。
この本で「直葬」という言葉も初めて知った。葬式も何もなく、自宅や病院から直接遺体を火葬場に運んで焼くだけだという。身寄りのない場合がこうなるが、最近はNPO団体と契約を結び、直葬をしてもらうよう頼んでいる人もいるという。
「呼び寄せ高齢者」という言葉もあるらしい。田舎から両親を都会に呼び寄せることを言うらしく、たいていの場合、都会に適応できなくてうまくいかないという。なんだか身近にありそうな話である。
私には第四章の元銀行員の高野さんの話が妙にリアルに見えた。仕事のしすぎで妻子に逃げられ、定年になった時は自分一人。お金に余裕があったので、63歳で三食、医療が死ぬまで補償された老人ホームに入っている。記者に銀行時代の自慢話を嬉しそうにする様子が痛々しい。会社とのつながりをなくしたとたん、「無縁化」してしまう人々が、最近は大勢いるのではないか。
今朝の朝日の「孤族の国」は、39歳で餓死した男の話だった。取材にさえ応じない兄や、すぐそばに住みながら「本人の責任」と言う伯父。
現代のような格差社会では、「本人の責任」だけではない場合が多い。もともと普通の若い人が定職にありつけないケースが多いのだから。やはり「富の再分配」というか、「持てる者」が「持てざる者」をカバーする社会的仕組みがもっと必要なのではないか。
| 固定リンク
「ニュース」カテゴリの記事
- 自民大勝の朝(2026.02.09)
- 「中国にとって最も戦争しやすい国は、実は日本だと思うんです」(2026.01.22)
- 福崎裕子さんが亡くなった(2025.12.23)
- 高市自民党総裁に考える(2025.10.06)
- 国際女性デーに考える(2024.03.09)
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 『過疎ビジネス』に蝕まれる日本(2026.04.14)
- 椹木野衣『戦争と万博』の世界観(2026.04.02)
- 『アルジェリア戦争』を読む(2026.03.29)
- 高橋源一郎『ぼくたちはどう老いるか』にめまい(2026.03.19)
- 遠藤周作『留学』に考える(2026.02.01)


コメント