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2010年12月29日 (水)

「孤族の国」とか「無縁社会」とか

年末になって、朝日新聞で「孤族の国」という連載が始まった。何も最も孤独を感じる年末にやらなくてもと思うが、気になって毎日読んでいる。そんな時にNHKのドキュメンタリー『無縁社会』が本になったので、買ってみた。この番組が話題になっていることは知っていたが、一度も見たことがなかった。しかし本を読むだけでも深刻さは伝わってくる。

第一章に「行旅死亡人」という言葉が出てくる。これは朝日の「孤族の国」でも使われた言葉だ。「警察でも自治体でも身元がつかめなかった無縁死のこと」らしい。NHKの調査では1年間で3万2千人という。この人々は官報に数行で情報が載せられるだけだ。

NHKの記者は、自宅で死んだ氏名不詳の死人の跡を追いかけ始める。聞きこみの結果、名前がわかり、二十年間勤めた職場がわかり、最後に故郷がわかる。秋田で建具職人として暮らしていたが、友人の連帯保証人になって財産を失い、妻子と別れて東京の給食センターで一人で働いていたという。そして定年退職後も日雇いで工場で働き、毎年両親の供養料を寺に送っていた。そして73歳でアパートで死に、一週間後に発見されて「行旅死亡人」となった。

この本で「直葬」という言葉も初めて知った。葬式も何もなく、自宅や病院から直接遺体を火葬場に運んで焼くだけだという。身寄りのない場合がこうなるが、最近はNPO団体と契約を結び、直葬をしてもらうよう頼んでいる人もいるという。

「呼び寄せ高齢者」という言葉もあるらしい。田舎から両親を都会に呼び寄せることを言うらしく、たいていの場合、都会に適応できなくてうまくいかないという。なんだか身近にありそうな話である。

私には第四章の元銀行員の高野さんの話が妙にリアルに見えた。仕事のしすぎで妻子に逃げられ、定年になった時は自分一人。お金に余裕があったので、63歳で三食、医療が死ぬまで補償された老人ホームに入っている。記者に銀行時代の自慢話を嬉しそうにする様子が痛々しい。会社とのつながりをなくしたとたん、「無縁化」してしまう人々が、最近は大勢いるのではないか。

今朝の朝日の「孤族の国」は、39歳で餓死した男の話だった。取材にさえ応じない兄や、すぐそばに住みながら「本人の責任」と言う伯父。

現代のような格差社会では、「本人の責任」だけではない場合が多い。もともと普通の若い人が定職にありつけないケースが多いのだから。やはり「富の再分配」というか、「持てる者」が「持てざる者」をカバーする社会的仕組みがもっと必要なのではないか。

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