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2011年1月30日 (日)

哀しい男たちを描く邦画2本

もう上映も終わりに近づいているが、今年の初めに映画館で見た2本の邦画について書いておきたい。『酔いがさめたら、うちに帰ろう』と『海炭市叙景』。どちらも現代社会にうまくついていけない、哀しみをたたえた男たちの姿が際立っている。

『酔いがさめたら、うちに帰ろう』は、アルコール依存症の男の話だ。自分もそうなる可能性があるので、そうなったら精神病院に入院して、あのような生活を送るのだと思いながら見た。何といっても浅野忠信の演技がすごい。彼は何を演じても素のままのように見せる俳優だが、とりわけこの映画は浅野が本人を演じているようにしか見えない。見ている自分も彼に同化してしまった。
浅野が見る幻想などいくつかのシーンは、ちょっと古い手法で気になったが、全体に流れるドキュメンタリーのようなリアルさや即興性はそれを上回る効果を生んでいる。

『海炭市叙景』はもう少し引いたところから見た、寂しい港町の点描だ。現代社会についていけない街全体を、5つの物語を通して描いている。造船所の閉鎖で職を失う若い男やプラネタリウムで働く中年の男や二代目のガス屋の男など。それぞれの物語に出てくる人物が微妙に交差して全体を織りなしている。
物語も撮影も丁寧で美しいのだが、貧しさや哀しさを美化しすぎるあまり、自己満足に陥っているような気もした。当たり前だが、現実は美しいだけでは終わらない。

どちらも現代日本の抱える問題を正面から見据えた見ごたえのある秀作だったが、どこか自己充足的なスタンスが気になった。それは男性中心の視点でもある。

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