コミュニティが世界を救う?
前から、「コミュニティ」という言葉に違和感があった。どうも机上の空論という気がしていたからだ。住んでいるアパートで実際に近所づきあいをするのはやはり億劫だし、仕事以外のサークル活動的なことをする暇はない。しかし、広井良典氏の『コミュニティを問い直す』を読んで、少し世界が広がった気がした。
この本自体は教科書的というか、ずいぶん大きな視点からコミュニティを考えている。その意味でちょっと退屈だが、時々はっとするようなことが書かれている。以下、おもしろかった箇所を書く。
経済構造から考えると、物質→エネルギー→情報→時間というように社会が求めるものは変わってきた。現在のような定常化社会にとっては、人々の欲求は充足的、あるいはローカルな方向へと転化しつつあるという。
日本はヨーロッパに比べると、公共的な住宅の割合がずいぶん低い。最も高いオランダは35%なのに、日本は7%しかない。社会保障費もそうで、対GDPで30%近いスウェーデンに比べて日本は18%。公的教育支出の対GDP費も8%を超すデンマークに比べて、日本は3%と少し。今の日本の格差社会は当然の結果だが、これまで長い間一億総中流などと言われ、貧富の差が少ない国だったのがむしろ不思議だ。
現在、日本の自治体は公有地をどんどん売って減らしている。広井氏は「現在のような時期を地域コミュニティ再構築のひとつのチャンスととらえ、公有地を福祉政策・コミュニティ政策・都市政策の有効なツールとして積極的に活用してゆくことが重要なのではないか」と説く。あるいは「都市政策や街づくりの中に「福祉」的な視点を、また逆に福祉政策の中に「都市」あるいは「空間」的な視点を、導入することがぜひとも必要なのである」。
広井氏は、市場経済を超える領域がこれから重要で、「そこでは「新しいコミュニティ」の創造ということが中心的な課題となる」と締めくくる。
でもどうやって、と言いたくもなるが、何だか「コミュニティ」が世界を救うキーワードにも思えてきた。
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