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2011年1月27日 (木)

『カイエ・デュ・シネマ』ベストテンの原理主義

フランスに『カイエ・デュ・シネマ』という映画雑誌がある。かつてはゴダールやトリュフォーたちヌーヴェル・ヴァーグの監督たちが生まれた神話的な雑誌だが、今でも世界各地の映画ファンの尊敬を集めている(かくいう私も年間購読をしている)。この雑誌は毎年年末にその年のベストテンを決めるが、その結果を載せた号が最近手元に届いた。

既に日本語でも先月ネットに出ていたが、あえて書き写す。

1.『ブンミおじさんの森』(アフィチャッポン・ウィーラセタクン監督)
2.『バッド・ルーテナント』(ヴェルナー・ヘルツォーク監督)
3.『ゴダール・ソシアリスム』(ジャン=リュック・ゴダール監督)
4.『トイ・ストーリー3』(リー・アンクリッチ監督)
5.『ファンタスティック Mr. Fox』(ウェス・アンダーソン監督)
6.『シリアスマン』(ジョエル&イーサン・コーエン監督)
7.「人のように死ぬ」(ジョアン・ペドロ・ロドリゲス監督)
8.『ソーシャル・ネットワーク』(デビッド・フィンチャー監督)
9.「シューガ」(ダレジャン・オミルバイエフ監督)
10.『母なる証明』(ポン・ジュノ監督作)

公開時期の関係で、日本では大半が今年公開の作品だし、『母なる証明』は日本では一昨年の公開なので、キネマ旬報のベストテンなどとは全く重ならない。それにしても変だ。

『ブンミおじさんの森』はすごいが、一番かなと思う。とにかく西洋人受けする映画なのは間違いない。2位の『バッド・ルーテナント』となると、?。作家主義の『カイエ』はヘルツォークを守り続けるのか。ゴダールは『カイエ』にとって当然として、『トイ・ストーリー3』は???。『ファンタスティックMr.Fox』はおもしろいけど、そんなにか。ウェス・アンダーソンを前から評価する『カイエ』らしい。『シリアスマン』と『ソーシャル・ネットワーク』『母なる証明』の下位の3本はある程度順当な気がする。

編集長ステファヌ・ドゥロルム氏の巻頭文がこれまたすごい。「2009年は『テトロ』『風にそよぐ草』『ブロンド少女は過激に美しく』『トウキョウ・ソナタ』『ハデウェイヒ』『イングロリアス・バスターズ』等々傑作が揃っていたが、2010年はそれに比べて地味である。その中でカンヌでまさかのパルム・ドールを取ったアピチャッピン・ウィーラセタクンの『ブンミおじさんの森』のみが屹立している。40歳の監督が根源的に新しい作品を作ったことに心が安らぐ」。

日本では『テトロ』も『風にそよぐ草』も『ハデウェイヒ』も映画祭のみの上映だし、何だか映画をめぐる環境も含めてすべてが違う感じで、日本の映画ファンはとてもついていけない。熱狂的な原理主義的宗教団体のような気さえしてくる。
映画の評価とは、国が変わるだけでこんなにも多様なものだと痛感した。

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