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2011年1月 7日 (金)

中国映画はどこに向かうのか

中国で2000万の観客を集めたという『唐山大地震』を見て思ったのは、中国映画はハリウッドを目指しているのではないだろうか、ということだ。まず地震のカタストロフを巨大なセットとCGを駆使して迫力満点で見せ、その後の30年余を一つの家族を中心にしたメロドラマとして描く。

何度も泣ける。まず地震で夫と娘を亡くした母を見て泣き、生き残った息子がバスに乗って村を出てゆく場面で泣く。実は生き残っていた娘が、育ててくれた義父と再会して泣き、そしてその娘が実の母に再会して泣く。あるいはもっと泣いたかもしれない。

1976年の唐山大地震という運命を前にして、家族が生死を分かち、そこからいくつもの再会のドラマが始まる。死んだと思った娘が老いた母に会うという最大のメロドラマをラストに用意しながら、一家族の30年の歴史を破綻なく語ってゆく。みんなが記憶に新しい、2008年の四川大震災も物語の中にうまく入っている。この映画を見ながら、私はイタリア映画の『輝ける青春』を思い出した。
映像的にも、最初の無数のトンボの群れや大地震の迫力あるシーンに始まって、ハリウッド映画と比べても遜色がない。いくつもの再会の場面を、ロング・ショットとクローズアップを抑制を効かせながら編集しているところなど、絶妙だ。

ハリウッドと違うのは、そこに中国という国家の影が感じられるところだろうか。唐山という都市を通じて、1970年代から中国がいかに変貌し、都市化したかを見せること、二つの地震の時に中国の軍隊がいかに役立ったかを見せたり、孤児になった娘を引き取った夫婦を通じて、人情あふれる人民軍兵士を見せること、四川大震災の救助にいかに中国のボランティアが活躍したかを見せること、等々。

それはたぶん、ふだんから最近の中国政府の傲慢な態度に腹を立てたり、あるいはジャ・ジャンクーやワン・ビン、ロウ・イエなどの反体制的な才能溢れる監督たちの映画を見てきたからかもしれない。
そんなことを考えずに普通に見ればよくできた娯楽映画なのに、ついつい身構えてしまう。

『再会の食卓』もそうだったが、中国の娯楽映画は家族の物語が多い。家族の物語はハリウッドでもメジャーなテーマだが、それだけでは「やっぱり中国映画」と言われてしまう。同じように一家族の30年を追ったイタリア映画『輝ける青春』では、個々の恋愛が物語の中心にある。
今後、家族がメインでない娯楽映画がどんどんできたら、中国はハリウッドに迫ってゆくかもれない。

3月26日公開。松竹配給で丸の内ピカデリーがキー館だから、相当の拡大上映を狙っていると思うが、さてどのくらいの成績となるか気になる。

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