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2011年1月 9日 (日)

シャブロルの高笑い

去年亡くなったクロード・シャブロルの『引き裂かれた女』の試写を見た。去年の東京国際映画祭で上映された遺作『ベラミ』の一つ前の作品だが、決してできのいい作品とは言えない。しかし謎のような結末も含めて、全体に漂う後味の悪さと不完全燃焼感が不思議な魅力を放つ。

物語は簡単だ。中年の人気作家は、テレビ出演を機に知り合った美人のお天気キャスターと恋に落ちる。一方、彼女に一目ぼれをしてしまう金持ちのボンボン青年が現れる。人気作家は突然姿を消し、女は愛してない青年と結婚してゆく。

登場人部たちは、誰もがいかにもといった雰囲気を濃厚にまとう。人気小説家を演じるフランソワ・ベルレアンも、八方美人で芸能界をしたたかによじ登る役のリュディヴィーヌ・サニエも、金持ちでバカだが憎めない青年役のブノワ・マジメルも。彼らを取り巻くテレビ界、出版界、あるいは地方の上流階級社会の人々も、いかにもそれらしい。
これがパリではなく、地方都市のリヨンというのがまたいい。地方独特の保守的で嫌みな感じが全体に漂い、テレビや出版の業界の虚構性と混じり合う。

そしてシャブロルは決定的瞬間を見せる前に場面を転換し、黒みを入れる。だから大事なことは何も画面に映らない。作家が女を連れて行った秘密クラブで何が行われたのか、なぜ作家は突然ロンドンに行ったのか、なぜ鍵を変えたのか、裁判で女はどういう証言をしたのか。
そして最後の手品のシーンは何なのか。見終わると、すべては観客の想像に任せますよ、と言って高笑いをしているシャブロルがいるような気がしてきた。

『沈黙の女』などに比べると普通の観客には単なる失敗作に見えるかもしれないが、映画好きにはたまらない醍醐味がある。今春公開。

ユーロスペースの予定表を見ていたら、6月のフランス映画祭の時にシャブロルの特集がユーロスペースや日仏学院で行われることがわかった。これまでリヴェットとか、レネとかやったパターンだ。楽しみだが、6月は忙しいのでどれだけ見られるか。去年までのように3月なら良かったのだが。

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