カンディンスキーのスリリングな変容
正月早々、三菱一号館美術館の「カンディンスキーと青騎士」展を見た。カンディンスキーは、ポンピドゥ・センター所蔵のものなど晩年の作品を見ることが多く、いつか初期のドイツ時代のものをじっくりと見たいと思っていたので、良い機会だった。
この展覧会は、ミュンヘンにやってきて絵を書き始めた1901年の絵から始まる。ゴッホのようにペインティング・ナイフで色彩を塗り込めた作品があったり、ユーゲントシュティール様式の装飾的な絵画があったりする。古き良きロシアを回顧するような内容もある。いずれも、色使いのうまさが際立つ。
1908年にムルナウに友人たちと移住してからは、さらに色彩重視となって、風景は形が壊れてゆく。特に黄色や赤や青の原色を大きく引き伸ばして見せる。時代を追うごとにさらに抽象的になり、1911年の青騎士展以降は、《印象》や《即興》シリーズなど、勢い溢れる抽象画が現れる。その過程を見ていると、画風のスリリングなまでの変容が手に取るようにわかる。
そして1913年の《コンポジション》シリーズでこの展覧会は終わる。それ以降の、例えば晩年のタツノオトシゴのような絵はない。それでも初期をじっくり見られて満足だった。
「青騎士」のほかの画家たちの作品も出ていたが、どうしてもカンディンスキーの変容に気を取られてしまい、じっくり見る気が起きなかった。
あとで気づいたことだが、この画家は30代後半で絵を書き始めている。ちょっと驚いた。
この展覧会はミュンヘンのレンバッハハウス美術館の所蔵品展だ。三菱の美術館も最初はマネ展のように、世界中から作品を借り集めた個展を開いていたが、もう普通の美術館レベルの企画になっている。調べて見たら、2月6日まで開催後、名古屋、神戸、山口に行く「巡回展」だった。
私としては「〇〇美術館所蔵品展」ではなく、去年、ルノワール、マネ、ゴッホ、ドガで見たような個展を見たい。画家の一生をたどる展覧会は、本当にスリリングだ。
今年の大型展は、朝日は「大英博物館展」と「プーシキン美術館展」で、読売は「プラド美術館展」「ナショナル・ギャラリー展」「ポンピドゥ・センター展」と“引っ越し展”ばかりらしく、がっかりだ。
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