« ヤクザ映画のプロデューサーの話 | トップページ | 朝日の文化面は大丈夫か »

2011年1月22日 (土)

人前で話すことが苦手な人のための映画

教師をしているくせに、実は私は人前で話すことが苦手だ。小さな宴席で周囲の笑いを取るのはできるが、送別会のスピーチとなるともうだめだ。気のきいたことが言えない、肝心なことを言い忘れる等々。とりわけ前の職場はスピーチがうまい人が多かっただけに、いつも劣等感を抱いていた。『英国王のスピーチ』は、そんな人前で話すことが苦手な人のための映画である。

舞台は1920年から30年代の英国。主人公は後半に国王となるジョージ6世で、演説が大の苦手だった。それは吃音だったからで私の場合とは違うが、物語は彼が国民の前で立派に演説ができるようになるために特訓を受け、最後に成功するまでを描く。演説の練習だけで2時間近くも持つのかと思うが、これが実にスリリングで感動的なラストに向けて、どんどん盛り上がる。

2時間の多くは、スピーチ矯正の専門家、ライオネルとの治療のシーンだ。オーストラリア人で変人のライオネルが、時には国王を怒らせながらも、次第に心をつかんでゆく。国王の即位式では「ここはウェストミンスターですぞ」と寺院の大司教を怒らせながらも、ライオネルは思い通りに演出し、演説を成功させる。
クライマックスは、ドイツとの戦争開戦の演説だ。バッキンガム宮殿の部屋の奥にある狭い小屋のような録音室にたどり着くまでの長い時間。国王はライオネル一人を前にして、マイク演説を始める。その演説を家庭やバーのラジオや宮殿前のスピーカーで聞くさまざまな階級の人々。演説が終わると、宮殿前には多くの人々が押し寄せている。それを見る国王の表情。

演出に特に工夫があるわけではないのだが、登場人物を演じる俳優たちの個性的な顔つきといい、克明に当時を再現した美術といい、淡々とした物語の進行といい、いかにもイギリスらしい映画だ。スティーブン・フリアーズ監督の『クイーン』もそうだったが、皇室を描くイギリス映画は本当におもしろい。
日本の皇室もだれかこのくらいのユーモアで描いて欲しいが、無理なのだろうか。
2月26日公開。アカデミー賞にからむ気がする。

|

« ヤクザ映画のプロデューサーの話 | トップページ | 朝日の文化面は大丈夫か »

映画」カテゴリの記事

コメント

私もスピーチが大の苦手なので、すっごく共感して、一緒になってハラハラしながらジョージ6世を応援しちゃいましたよ!
日本ではスピーチの重要性ってまだまだあまり感じられてないと思いますが、
言葉でしっかり伝えることがどんなに大事か、が、イギリスならではのユーモアと一緒に実感できる
素晴らしい作品だと思いました。
また、これ、大ヒットさせないと、マズいので、古賀さんも応援してください~~

投稿: 星野有香 | 2011年1月24日 (月) 16時38分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/50652661

この記事へのトラックバック一覧です: 人前で話すことが苦手な人のための映画:

« ヤクザ映画のプロデューサーの話 | トップページ | 朝日の文化面は大丈夫か »