イランのジャファール・パナヒ監督をめぐって
昨日エジプトの民主化運動のことを書いたが、その動きはイランにも波及しているらしい。そういえば、少し前の朝日新聞では、ベルリン国際映画祭が開幕し、審査員に選ばれたイランのジャファール・パナヒ監督が入獄中で出席できなかったことが書かれていた。パナヒは『白い風船』や『チャドに生きる』(ベネチア国際映画祭金獅子賞)『オフサイド・ガールズ』など、日本でも何本も公開された監督だ。
確か去年のカンヌでも審査員なのに拘束中で欠席したし、ベネチアでは数分の短編がイラン政府への抗議のために上映された。
そう思っていたら、最新の仏『カイエ・デュ・シネマ』誌に詳細が書かれていていた。拘束されていたパナヒに昨年12月18日に判決が下り、懲役6年間に加え、20年間は海外渡航を禁じられ、文章を書くことも映画を撮ることもメディアのインタビューに答えることも、海外の文化機関と関係を持つこともすべて禁じられたという。
理由は、アフマディネジャド政権に反対する内容の映画を企画したからだ。まだ作ってもいない映画に対して、この判決はすさまじい。
カンヌもベネチアもベルリンもそれに反対する声明を発表しているのに、日本ではこの判決はニュースにすらなっていないように思う。この鈍さは何だろうか、と自分を棚に挙げて思う。
ちなみに『カイエ』誌の記事では、パリに住むラフィ・ピッツ監督(昨秋の東京フィルメックスですばらしい『ハンター』を上映)は、パナヒを救う方法を書いている。外国政府からの正式な抗議は意味がない。むしろ世界の映画人の反発の方が重要だ。「イランではカンヌは知られていないが、ショーン・ペンなら誰でも知っている。もし彼が反対を表明したら…」。そして現政権にイラン革命の意義を問いただすことが、一番効くはずだという。
さて今日の朝日新聞を読むと、イラン政府はエジプトの民主化を応援しているという。エジプトは親イスラエルだったから当然だろう。一方で米国は今回のイランの反政府運動を支持しているらしい。イラン革命を成し遂げて中東で最も過激なイスラム主義を掲げるイランは、米国にとって危険というわけだ。何とも複雑な構造だ。
同じイランでは、キアロスタミ監督はイタリアで『トスカーナの贋作』(傑作!今週末公開)を撮り、次回作は日本で撮るという。本国ではもう撮れないのか。昨年公開された『ペルシャ猫を誰も知らない』のバフマン・ゴバディ監督は、確かイラクのクルド人地区からイランに戻れないでいるはずだ。そして今回のパナヒ監督への判決。アフマディネジャド政権がおかしいのは、間違いない。
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