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2011年2月20日 (日)

『ピストルズ』は壮大な法螺話

去年の秋に買っていた阿部和重の『ピストルズ』をようやく読んだ。帯に作家たちの絶賛のコメントが並んでいるし、谷崎潤一郎賞だしと思って買ったが、700ページ近い厚さに怯んでいた。あるいはそれ以上に阿部和重特有の読みづらさを思い出して、気が進まなかったのかもしれない。ようやく読んだが、相変わらず作家の妄想がうずまく、壮大な法螺話だった。

前作『シンセミア』に続き、阿部の故郷である神町を舞台にした神話的な話だ。今回は菖蒲家という魔術師一家が中心で、その一家の由来から最近のできごとまでのありえない話が、えんえんと続く。おもしろいような、おもしろくないような、結局ばかばかしいような。

読んでいると、中上健次や大江健三郎の日本的な神話世界を思い出す。しかし中上のように土俗的世界ではないし、大江のような文化人類学的空間でもない。阿部には、そのような強い磁場はない。
あるのはファンタジーに近い、女たちの物語だ。父親を囲む4人の娘とその異なる母たちを中心に、キノコとか麻薬とかで頭がおかしくなって、ついでにまわりもおかしくしてしまうという話なので、正直ついていけない。しかしそこに米軍とか殺人とか賭博とか妙にリアルな事件も接ぎ木されていて、20世紀後半の精神風景に満たされており、何となく最後まで読んでしまう。最後の結末は何とも興醒めだが、これも阿部らしい。

しかしこんな大仰な法螺話を書かないといけないとは、小説家も大変だなと思ってしまう。それくらい、この小説には、書く必然性が感じられない。

ところで題名の「ピストルズ」はピストルpistol=銃のことではなく、めしべpistilのことだった。帯に書いてあるのを見つけたのは読んだ後だった。こういう小細工も阿部らしい。

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