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2011年2月23日 (水)

原節子ふたたび

『新潮45』の最新号には、15歳の原節子の出ている内田吐夢監督の映画『生命の冠』のDVDが付いていると朝日新聞で読んで、慌てて買いに行った。ようやく見たが、状態も悪く、それ以上に作品としておもしろくなかった。しかし雑誌に寄せられた、何本かの原節子を讃える文章が読みごたえがある。

DVDの方は、戦前の内田吐夢監督作品としても『警察官』や『限りなき前進』にはるかに劣る出来だし、原節子も山中貞雄監督の『河内山宗俊』の鮮烈さに比べたら、かなり落ちる。これまでDVDにならなかったのも当然だろう。

しかし横尾忠則や荒木経惟、茂木健一郎、長部日出雄などの文章は秀逸だ。
特に横尾忠則。「原節子の一番好きなのは彼女の顔です。顔だけではなく、声も手も足もすべてですが、彼女の顔から匂ってくるあの天上の芳香はただものではありません。原節子をこの世の人と思えば思うほど彼女はこの世から遠ざかっていきます。あの美は地上の美ではなく、天上と結ばれた美だと思います。それはどういうことかというと魂そのものの表象です」。女優に対するこれほどの賛辞は、読んだことがない。

茂木は「「幸せになるんだよ」との父の言葉に、「ええ」と微笑むその目の輝き。星空の永遠さえかいま見えるのだ」。
長部は『晩春』以降の紀子三部作のことを、「「奇跡」「完璧」「不滅」の三語だ」。

今は90歳のはず。小津安二郎の葬式以来、もう47年も人前に顔を見せていないという。どんな後半生を送ったのだろうか。『新潮45』によれば、昔は「ここが原節子さんの家です」と観光バスが止まっていたというから、「お隠れになった」(荒木経惟)のも当然か。
彼女はテレビに出ていない。最後の本物のスターたるゆえんである。

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コメント

原節子さん。

いつまでもお元気でいてください。

投稿: oduyasu | 2011年2月23日 (水) 09時51分

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