抱一の銀屏風にふるえる
朝日新聞夕刊で、酒井抱一の銀屏風の作品が出光美術館で展示中という記事を読んだら急に現物を見たくなり、翌朝に有楽町の出光美術館に行った。とりわけ銀屏風に描かれた大作《紅白梅図屏風》を久しぶりに見て、ふるえてしまった。
抱一という名前は、高校生の頃、漱石の小説で知った。『門』で、主人公の宗助が父の形見として持っていたのが抱一の銀屏風だ。お金がなくて売ることになり、最初は古道具屋に「抱一は最近はあまりねえ」と言われるが、だんだん高くなるアレだ。その頃はどんな絵かなと思っていた。最近、『虞美人草』にも出ていたので驚いた。
今回の展覧会は酒井抱一の生誕250年を記念して行われるもので、タイトルは「琳派芸術」。既に光悦、宗達、光琳の第一部は終了していて、抱一を中心とした第二部が3月21日まで開催中だ。
京都の御用絵師だった宗達や光琳が華麗な金の世界を繰り広げたのに比べると、江戸に育った抱一の描く世界はは洒脱で遊びが多い。
その斜に構えた姿勢を最も表すのが、銀屏風だ。金ではなくて、銀で塗り込める美学。有名なのは東京国立博物館にある《夏秋草図屏風》で今回は展示されていないが、大胆なデザイン性が際立つこの作品よりも、《紅白梅図屏風》の方が、銀そのものの迫力をじっくりと味わえるかもしれない。
左右の屏風に一本づつ黒い梅の木がある。右には赤い花が、左には白い花が見えるが、全体を銀が覆い尽くす。まるで怨念のように塗り込められた銀を見ていると、匂いや煙まで出てきそうで、何だかこの世のものとは思えなくなってくる。
10時の開館5分後に着いたが、既に一階のエレベーターには列ができていた。中高年を中心に大賑わいだ。たぶん一日平均5000人はくだらないだろう。大半が出光の所蔵作品だから、展覧会の費用はほとんどかからない。1本の展覧会で数億の黒字だろう。持てる者は強い。
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