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2011年3月 9日 (水)

『神々と男たち』を見られる喜び

グザヴィエ・ボーヴォワ監督のフランス映画『神々と男たち』は昨秋パリで見ていたが、先日の朝日と読売夕刊で絶賛の映画評を読んだらまた見たくなって、銀座のシネスイッチに行った。パリではあまり考えなかったが、日本で見ると本当にキリスト教そのものの映画だし、それ以上にフランスとアルジェリアの関係を巡る映画だと思った。

その意味では、これほど日本の現実から離れた映画はあまりない。アルジェリアでキリスト教の布教をする8人のフランス人修道士。危なくなったら帰国すればいいだろうと思うが、そう簡単ではない。だから日本人には極めて遠い映画で、これが銀座のど真ん中で上映されるとは、やはり日本はいい国だと思う。

状況の意味や意義は理解できなくても、修道僧たちの強い信仰心と人間らしさ、そしてそれを破壊する暴力のおぞましさは、十分に伝わってくる。それだけの映像と音の力がある。
今回気がついたのは、静かで愛に満ちた修道僧の生活と、テロリストたちの侵入を実にうまく対象的に描いていることだ。例えば、テロリストのヘリコプターが修道院の上を舞うシーン。ヘリコプターからのショットには銃口が時々映り、その向こうに森や修道院が見える。そして修道院の中でjは、ヘリコプターの不吉な音を聞きながら、修道僧が集まって讃美歌を歌う。恐怖と背中合わせの美しい声の響き。

1度目に見た時もそうだったが、最後にみんなが集う晩餐のシーンが印象的だ。ワインを飲む修道僧たちの顔、顔。心に残る顔のアップとして映画史に残るのではないだろうか。私はドライヤーの『裁かるるジャンヌ』を思い出した。これから先、「白鳥の湖」の音楽を聞いたら、このシーンを思い出さずにはいられないだろう。それにしてもなぜこの曲が選ばれたのだろうか。

たぶん現在東京で上映している映画で、最も見るべきものだと思う。私は封切り2日目の日曜の夕方に見たが、ちょっと観客が少なかった。この映画を日本語字幕付きで見られる喜びをもっと味わってほしい。

そういえば、昔この監督と会ったことがある。パリのカフェで知り合いの映画評論家と昼食を取っていたところに現れて、一緒にコーヒーを飲んだ。確か第一作を撮ったばかりの頃で、極めて礼儀正しく謙虚な感じが印象に残っている。

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