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2011年3月17日 (木)

こんな時に『アンチ・クライスト』を見に行く

地震後2日目の日曜日に、ラース・フォン・トリアーの『アンチ・クライスト』をシアターNで見た。こんな時こそ、いつものような生活をしたいと思ったからだ。16:30の回で、観客は私を含めてわずか8人。みんな一人で来た、20代から40代の男性だった。

悪評は2009年のカンヌに出た時から聞いていたし、日本で2年近く後に公開が決まっても、良くない評判も多かった。しかし日経で中条省平氏が「『冷たい熱帯魚』とともに、本年度「トンデモ映画」の東西の横綱を争う出来栄え」と書いていたこともあって、是非見たいと思った。

結果から言うと、相当に悪趣味だが、ラース・フォン・トリアーらしく、見応えがあった。冒頭のスローモーションのセックス・シーンから、ホラー映画に近づいてゆく山小屋のシーンまで、手持ちカメラによる撮影には異常な緊張感がある。どんぐりが屋根に落ちる音や、突然のキツネや鹿のショットも、まるで幻想のようだ。

シャルロット・ゲンズブールが森の中へ走っていって、突然オナニーを始めたり、ウィレム・デフォーの足に穴を開けて砥石をはめたり、しまいには自らの性器を切り落としたり。見ていて耐えがたいシーンが後半にテンコ盛りだ。それでも二人の俳優の圧倒的存在感に、森や動物のこの世とは思えない美しさがからまって、最後まで引っ張る。ラストの女たちは何だろうか。

この監督は第一回作品の『エレメント・オブ・クライム』の昔から、わかりやすかったことはない。物語と関係のないシンボルをあちこちに散りばめ、人の感覚を逆なでするような映像を撮る。今回は題名に「キリスト」をつけ、シャルロット・ゲンズブールにトンデモない場面を演じさせ、最後には「アンドレイ・タルコフスキーに捧ぐ」として、さらに物議を醸そうとしただけだ。

それにしても、映画館に人がいない。『唐山大地震』の公開は無期延期になり、上映中の『ヒアアフター』は興行を中止したという。映画を見る人は、おおかたのの内容がわかってお金を払って意志的に見るわけだから、テレビとは違う。配給側、興行側が自主規制するのはどうだろうか。

夜の繁華街にも人は少ない。そうやってみんな家に閉じこもって世の中にお金が回らないと、日本の復興はどんどん遅れると思うのだが。

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» 映画「アンチ・クライスト」宗教儀式に参加したような気分 [soramove]
「アンチ・クライスト」★★★ シャルロット・ゲンズブール、ウィレム・デフォー出演 ラース・フォン・トリアー監督、127分、2011年2月26日公開 2009,デンマーク、ドイツ、フランス、スウェーデン、 イタリア、ポーランド,キングレコード (原作:原題:ANTICHRIST )                     →  ★映画のブログ★                      どんなブログが人気なのか知りたい← 「息子を事故で失った夫婦。 そのことで二人の生活は大きく変化する... [続きを読む]

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