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2011年4月 9日 (土)

映画『八日目の蝉』はオーソドックスな力作

4月29日公開の『八日目の蝉』を見た。予告編やポスターで妙なオーラを感じて、気になっていたからだ。その予感は当たった。『八日目の蝉』は、近年珍しいオーソドックスな力作だ。

オーソドックスとは何か。まず役者たちがいい。愛人の娘を奪う女(永作博美)と、その女に4年間育てられた娘(井上真央)の二人の主人公が強烈に印象に残る。何度か映る二人のアップの表情は忘れらないだろう。そのまわりを取り巻くも森口瑤子や安藤千草、それからさらに脇役の余貴美子、田中珉、平田満、風吹ジュンなどもハマりすぎるくらい適役だ。

そして脚本がいい。実は原作は読んでいないけれど、赤ちゃんを盗んだ女が逃げながら暮らす毎日と、16年後の娘の日常を交差させながら、最後にその二つが収斂していく流れが巧みに構成されている。最初に結末を示すだけに、展開がうまくないと飽きてしまうタイプの物語だが、この映画はむしろ途中からどんどん盛り上がってゆく。永作の逃避行と井上の自分探しがどう結末をつけるのか、画面から目が離せない。

そしてもちろんだが、演出が的確だ。冒頭の雨の中の誘拐や裁判のシーンの永作のアップなど、随所に印象的な場面が散りばめられる。新興宗教のエンジェルホームのような、相当に難しいシーンも破綻がない。坂の多い住宅街や小豆島の風景も丁寧に撮られている。ストーリーとは直接関係のない、素麺を作るシーンや棚田の虫送りの場面まで印象に残る。

そして、ラストの永作が港で娘と別れるシーンに、井上が写真館を訪ねる場面が重なって、クライマックスとなる。真っ赤な暗室で浮かび上がる写真。正直に言うと、泣いてしまった。

泣いた後で一言。よくできた万人向けの秀作だが、敢えて言えば驚きはない。最近で言うと『冷たい熱帯魚』や『ヘヴンズストーリー』や『13人の刺客』のような、何を目指しているのか、何が起こるのかわからないような、刺戟には欠けている。もともとそれを目指した映画ではないが。
いまさらだが、角田光代の原作を読んでみようと思う。

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