« ふところに優しい神楽坂「まろうど」 | トップページ | 『さや侍』は映画ぎりぎり »

2011年4月26日 (火)

テーマのない展覧会

国立新美術館が毎年開く現代作家のグループ展「アーティスト・ファイル」は、テーマがないのが特徴だ。通常、こうしたアニュアル展は一人の学芸員に選択を任せ、おのずとテーマや一貫性が出てくる。ところがこの展覧会は、学芸員全員で話し合ったのか、誰が選んだかを明らかにしていない。

そのうえ、日本人のみならず外国の作家も含んでいるから、もうてんでんばらばらだ。なぜ選んだかもわからない作品が、あの美術館の学芸員の誰かが選んだ現代作家というだけの理由で会場に並ぶ。これは学芸員としての責任を回避した究極のニヒリズムであり、これを肯定するのはスノビズムでしかないと思う。チラシに「いずれも私たちが身を置く現代社会の特質を鋭く反映しており」書かれているが、そんなことは当たり前でまるで言い訳のように見える。

8組の作家による作品のレベルは低くはない。なかでは、松江泰治の写真と映像が圧倒的に存在感を示していた。世界各地の都市や風景を遠くから撮ったものの連作だが、どうしたらこれだけ細密画のようにピントがずれるに撮れるのか、摩訶不思議だった。2つの部屋に1点ずつある、かすかに車が動いたりする映像も効果的だ。

ほかの作家たちはコンセプト力の強さがいまひとつで、テーマがないのでほかの作家との相互作用もなく、面白みに欠ける。

その後、近くのサントリー美術館にも足を運んだ。そこは「夢に挑むコレクションの軌跡」という題のコレクション展で、考えて見たらこれもテーマがない。あえて言えばサントリー美術館の50年の軌跡がテーマで、そう思えばおもしろくなる。この美術館が赤坂のビルの上にあったのは知っていたが、その前は1961年に丸の内にできたとは知らなかった。
個人的には加納永納などの江戸の屏風画とエミール・ガレのガラス作品が印象に残った。トンボや蛾をモチーフにしたガレの造形はまとめてみると、実に奇妙な世界だ。

「アーティスト・ファイル2011」展は6月6日まで、「夢に挑むコレクションの軌跡」展は5月22日まで。

|

« ふところに優しい神楽坂「まろうど」 | トップページ | 『さや侍』は映画ぎりぎり »

文化・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/51496885

この記事へのトラックバック一覧です: テーマのない展覧会:

« ふところに優しい神楽坂「まろうど」 | トップページ | 『さや侍』は映画ぎりぎり »