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2011年5月15日 (日)

デンマーク映画は暗いか

デンマーク映画といえば、まず巨匠カール・ドライヤーがいて、それから今年のカンヌにも出しているラース・フォン・トリヤーがいる。「暗い」という決めつけは良くないが、どちらも暗澹たる問題作ばかり作る。8月公開の『未来を生きる君たちを』と6月4日公開の『光のほうへ』はともにデンマーク映画だが、それらの巨匠たちとは違う「暗さ」がある。

『未来を生きる君たちへ』は、女性監督スザンネ・ビアが今年のアカデミー賞外国映画賞を得た作品だ。アメリカ人に評価されるだけあって、「暗い」内容ながらもわかりやすく、かつメッセージ性が強い。

デンマークの小学校で、まわりになじめない二人の少年。一人はロンドンから転校したクリスチャン、もう一人は父親がスェーデン人でアフリカで働くアントン。クリスチャンは母親を亡くしたばかりで、アントンの母は父と別居中だ。この二人の少年の暴走に、その親たちの葛藤と、アフリカにおける救援の難しさを絡めてじっくり描いている。

少しだけ明るさが感じられる早朝の風景、とりわけ海辺の様子など、丁寧に撮られている。そして登場人物たちの顔がどれも印象的で、言葉は少ないが、それぞれのアップが心に残る。
あえて言えば、子供たちの葛藤と親の生き方の問題に、アフリカ問題まで加わって、いささか詰め込み過ぎかもしれない。しかしこれらの「暗い」内容は、邦題にもあるようにどこか未来へ向かっており、少年二人が新しい人生を生みだす光に満ちている。

『光のほうへ』は、本国デンマークでは『未来を生きる』と評価を二分した力作で、こちらはもっと「暗い」。アルコール中毒だった母の葬式で再会する兄弟の話だが、それぞれが不幸を抱え込み、つらい生活を送る。兄は友人の罪をかぶり、弟は息子を養うために強盗を働く。刑務所でフェンス越しに出会う二人。

絶望的な生活を送る兄弟を、カメラは淡々と追う。社会問題に正面から取り組む『未来を生きる君たちへ』と違って、この映画では何が問題かもわからない。しかしこの兄弟の生き方には、なぜか共感できる。何とも要領の悪い生き方だが、その優しさが伝わってくるからだ。そうして兄が弟の息子と手をつなぐラストに、大きな光が見える。

二作ともに、終わりに光が見える。それが最近のデンマーク映画らしさなのかもしれない。

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