倉俣史朗の作品を見ながら考える
六本木ミッドタウンの21_21デザインサイトで「倉俣史朗とエットレ・ソットサス展」を見た。ソットサスは有名なオリヴェッティやアレッシの仕事は展示されておらず、晩年のガラス細工でがっかりしたが、久しぶりに見た倉俣の家具はインパクトが強かった。
とりわけ赤いバラを透明なガラスに埋め込んだ椅子「ミス・ブランチ」は、今見ても目が覚めるほど美しい。背もたれに支えのないシンプルな椅子や、赤と青が散りばめられたベッドなど、単純な構造に装飾性を盛り込むという矛盾を綱渡りのように両立させている。
倉俣の作品を見ながら思ったのは、もともとここはこういう過去の優れたデザイン作品をまとめて展示するための場所だったのではないかということだ。これまでの展示は、活躍中のデザイナーが自分の世界を見せるショールームに近いものが多かった。記憶にあるのは佐藤卓、浅葉克己、日比野克彦、吉岡徳仁などの展示だ。
会場で配られている小冊子にも書かれているが、ここは三宅一生が2003年に新聞で「デザイン・ミュージアムを作ろう」という文章を書いたことがきっかけになったという。朝日新聞に載った記事は、日本はファッション、建築、インダストリアル、グラフィックなどのデザイン大国にもかかわらず、優れた作品を保存して展示する専門の場所がないのはおかしいので作りたい、という意味の内容だったと記憶している。
ならばもっと過去のデザイナーの作品をきちんとまとめて見せる場にしたらどうだろうか。今の活躍中のデザイナーは、発表の場には困らないだろうから。現状では「デザイン・ミュージアム」とは言えない。
「倉俣史朗とエットレ・ソットサス展」は7月18日まで。
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