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2011年5月16日 (月)

クーデルカの戦車に慄く

昨日は、最終日のベッティナ・ランスと始まったばかりのクーデルカの両方が見られる、と恵比寿の東京都写真美術館に出かけた。最初に見た「ジェセフ・クーデルカ プラハ1968」展に圧倒されて、あとは上の空の気分になってしまった。

本展は、1968年のいわゆるチェコ事件をクーデルカがカメラに収めたものだ。突然戦車がプラハ市内に現れて、市民を威嚇し、攻撃する。それに対して怯え、怒る市民の表情と行動。80点ほどの写真は、すべてその1週間のプラハを捉えたもので、その白黒の迫力に慄然とする。写真を撮ること自体も、極めて危険な行為だったに違いない。その切迫感がみなぎっている。

壁一面に大きな写真を展示したり、あるいは小さな写真を壁の上下に並べたり。その緩急が巧みで、展示室全体が、戦車が攻めてくるプラハの街になったような錯覚に陥った。
この写真は秘密裏にニューヨークに運ばれて、匿名で公開されて、ロバート・キャパ賞を受賞した。クーデルカが自分の写真だと名乗りを挙げたのは、1984年に父親が亡くなってからだという。

その後に「こどもの情景 戦争とこどもたち」というコレクション展を見た。1930年から90年までの内外で撮られた戦争中の子供の写真を展示したもので、ときどき有名な写真も出てくる。それなりにおもしろかったが、クーデルカの強烈な個性溢れる写真を見た後では、印象が散漫になってしまう。人間はいつも戦争ばかりしているのだ、と思ってしまった。

「ベティナ・ランス写真展 女神たちの楽園」は、それらを見た後には悪い冗談にしか思えなかった。最終日ということもあって賑わっていたが、特に若い人が多い。みなさん、それよりクーデルカを見ましょう。

「ジョセフ・クーデルカ」展は7月18日まで、「子供の情景」展は、7月10日まで。

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