『筑摩書房 それからの四十年』を一気に読む
近所の本屋で『筑摩書房 それからの四十年』という本を買って、一気に読んだ。創業から1970年までをたどった『筑摩書房の三十年』という本と並んでいて、こちらはそれから現在までをたどっている。つまり社史だが、『三十年』は和田芳恵、『それからの』の方は永江朗という外部の筆者が書いている。
『三十年』は1970年に出た有名な本の復刊だが、自分が知っている筑摩は『それからの』部分なので、こちらから読むことにした。
筑摩と言えば、長らく「倒産した出版社」のイメージがあった。高校生の時、国語の先生が「あの筑摩書房が潰れた」と話したのを覚えている。その先生の影響で、高校の終わりから大学の始めにかけて筑摩刊の「森有正全集」を買い揃えたが、倒産した会社といっても毎月配本されていた。
大学に入って、吉本隆明、山口昌男、蓮實重彦などの筑摩から出た本を読んだ。初めて出版社と直接接触したのも筑摩書房だった。『リュミエール』という映画雑誌に原稿を送ったところ、「筑摩書房ですが」と電話がかかってきた時の興奮は、今も忘れない。ゲラを持って、神田小川町にあった旧社屋に行くと、担当の編集者は団体交渉中で、だいぶ待たされたのを覚えている。その時の編集者が間宮幹彦さんで、その後もお世話になったが、この本でも彼の仕事はきちんと取り上げられている。水村美苗の『日本語が滅びる時』も彼の仕事とは知らなかった。
社会人になってからは、「ちくま文庫」「ちくま学芸文庫」「ちくま新書」などを端から買った。読んでいないものも多いが、ひらがなの「ちくま」という感触が、バブルからバブル後に向かう時代とよく呼応していた気がする。
この本は、この四十年間の筑摩の仕事が経営者や編集者を中心にまとめてあって、あの本はこうやってできたのかとわかっておもしろい。この出版社への尊敬がさらに増した。
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