河瀬直美、完全武装でカンヌへ
今日からカンヌ国際映画祭。日本からは三池崇の『一命』と河瀬直美の『朱花(はねづ)の月』がコンペに選ばれている。そのうち『朱花の月』を先日試写で見た。いかにもカンヌに向けて完全武装したような作品だ。
まずは、自然の中で生きる現代の人間を描く。冒頭と終わりの工事のシーンの泥とは対照的に、奈良の美しい自然が全編にわたって見せられる。登場人物たちもエコで今風だ。二人の男は会社員ではなく、自由な仕事をしながら、食事も作る。素材にこだわった和風の自然な食べ物。エコな生き方への共感は万国共通だろう。
そして河瀬監督らしい、女性の生き方。大島葉子演じる主人公は、夫と別の男を好きになり、子供を作ろうとする。自転車で男を追いかけ、するりと裸になり、小さな胸を何度も見せる。明川哲也(ドリアン助川)演じる夫は絶望する。女性の圧倒的な勝利。これもまた万国共通。
その道ならぬ恋愛は、戦時中の恋愛に結びつく。「赤紙が来た」という話は、『キャタピラー』でも『一枚のはがき』でも日本のイメージとして強烈だった。日本らしさのシンボルだ。
さらにその恋愛は、万葉集を通じて古代の時代にまで結びつく。その強い神話力。何度も読まれる万葉集の歌の数々。終わりには、藤原京という古代の都についての説明もつく。ここで日本らしさが世界の神話に結び付く。
もちろん、撮影はいつもながら手持ちカメラで、登場人物を舐めるように映す。この手作り感覚は、作品のテーマと一致している。
さてこの完全武装で、カンヌを制覇できるか。日本公開は9月3日。
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