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2011年5月31日 (火)

漢字が日本語をほろぼす

最近読んだ本で最も衝撃を受けたのが、田中克彦著『漢字が日本語をほろぼす』だ。我々はふだん漢字を不可欠だと思っているが、そのせいで外国人が日本語を学ぶのに必要な労力は他の言語の十倍になり、それ以上に日本人自身が四字熟語などに惑わされて思考能力を失っているというものだ。

漢文化と直接に接してきた周辺民族はひとつとして自らの言語の表記のために漢字を採用しなかったという。モンゴルしかり、チベットしかり。日本は10世紀頃、漢字から、オト表記のためにかな文字を作った。長い間漢字を使っていた朝鮮民族も、15世紀にハングル文字を作り出し、今では漢字をほとんど使っていない。日本だけが漢字を死守している。

中国自身もどんどん漢字の簡略化を進めている。かつて魯迅は、漢字がなくても書ける日本語に深い感銘を覚えたという。清国が衰え、日本が近代国家をめざして発達しつつあるのも、ひとえにかな文字のせいだと考えた。1974年に国交回復で日本の代表団が中国を訪れた時に、戦争のことをわびると、鄧小平は中国も2つの迷惑をかけたと言ったという。一つは「孔孟の道」を伝えたこと、もう一つは「漢字の弊」を与えたこと。

「日本語は最悪の自閉言語であることはまちがいない」

「日本語の習得がむつかしければ、ほんとうは日本人に劣らぬ能力や専門知識があるのに、日本語は、それができないという一点をもって、外国人をチャンスから閉めだす、都合のいい道具になっている。こうしておけば無能な日本人でも、このめんどうな日本語によって守ってもらえる、ありがたい言語なのである」

「もし言語の壁がなくなって、外国人が縦横無尽に日本語で書くようになったとしたら、いまの日本の作家の何パーセントが生き残れるかしれたものではない」

「漢字使いの得意な人たちは軍人になり、漢字をもてあそび、いろいろと戦争用語を作って国民をだまし、日本をとんでもない、悲惨な状態に追い込んでしまったことを忘れてはならない」

「日本の将来を考えるならば、むしろやるべきことは、「漢字文化圏」という牢獄の鎖をたち切って、そこからさっさと抜け出し、日本語独自の道をさがすことに力をそそぐべきだ。本国の中国の人たちはもっとさめているのに、日本人だけが中国人以上に漢字の正統性という幻想にしがみつき、漢字を恋しがっている」

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