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2011年5月17日 (火)

紀元二千六百年再考

どこかの書評で取り上げられていたケネス・ルオフ著『紀元二千六百年 消費と観光のナショナリズム』を読んだ。紀元二千六百年といえば1940年で、戦時一色だと思いがちだが、実はとんでもない消費・観光ブームだったというのを、当時の資料を駆使して検証した本だ。

この本は、5年後の敗戦というレンズを通して1940年を見るのではなく、あくまでその年の諸相を微細に眺めるという立場に立っている。すると例えば戦死者は1940年は前年の半分で、その前の年と比べると1/4。その後再び増えるから、この年はまさに「一段落した時期」という。

また戦前の小売業の景気が最も良かったのも、この年という。出版もナショナリズムに後押しされて、一大歴史ブームが起きている。レコードも愛国的な歌が流行って、3000万枚近くのレコードが売れている。

最も驚くべきは観光ブームで、日本の神話につながる土地への観光が流行った。伊勢神宮は戦前で最高の400万人が訪れ、奈良県には何と3800万人が旅行をしている。さらに朝鮮や満州などの植民地観光も大流行した。

筆者の言葉を借りると、「紀元二千六百年にあたっての、ダイナミックな大衆参加と消費主義の要素を無視することはできない。何千万人の日本人は、ゴム人形でも消極的抵抗者でもなく、心からこの国家主義的な、まぎれもなく愛国的な祖国の祝典を受け入れていたのである。人々は国史をまとめた物語に夢中になり、定時の大衆儀礼に参加し、愛国的な歌詞や作文をものし、愛国的な展覧会を見に行き、史跡を訪れていた。こうした行動を促進したのは国だけではない。印刷メディアや百貨店、鉄道会社といった非政府機関の働きかけも大きかった」。

自分より若いアメリカ人研究者が、こういう本を出す時代になったのだ、あらためて思う。

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