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2011年6月13日 (月)

クレーの大きさ

クレーがこれほど大きな画家だとは思っていなかった。竹橋の東京国立近代美術館で始まったばかりの「パウル・クレー 終わらない物語」展を見た感想だ。もちろんクレーは好きな画家の一人だが、セザンヌやマティス、ピカソなどのように、絵画そのものに革命を起こした画家だとは思っていなかった。しかし今回の展覧会を見ると、その一人に加わりそうだ。

この展覧会は、見ごたえのある大作が多いわけではない。むしろ小品が多いが、彼の創作過程を見せるものが集まっている。その過程は4つに分けられているが、一番驚いたのは「油彩転写」という独自の手法だ。素描を描いて、それを黒い油彩を塗った紙の上に置いて、描線を針でなぞって転写した後に色をつける。

彼の絵に特徴的な黒い線はエッチングかと思っていたが、より原始的な感じはこの素朴な技法から生まれていたのだ。さらに描いた絵を切ったり、つないだり。あるいは裏表に描いたり(日本の屏風絵のようだ)。二次元の絵画を三次元や四次元に広げるような、無限の反復と差異が生まれている。

彼の絵は、今でも本の表紙を飾れそうなぐらい、わかりやすく、親しみやすいものが多い。これまでそこにある種の神秘性というか、哲学的な深さを感じていたが、それが今回の展覧会で明確な意思によって追及されたものだとわかった。

こうした創作過程を見せる作品群の大半は、スイスのクレー・センターから来ている。そのほかこのテーマに沿った絵が内外から丁寧に集められている。国内作品も東近美の《山への衝動》や《花ひらく木》を始めとしてハイレベルの作品が多いのも驚いた。

東近美は、最近コンセプトのしっかりした好企画が多い。入場料収入を稼ぐための展覧会は、同じ法人の国立新美術館が引き受けるからだろうか。クレー展は7月31日まで。この前に京都で開催している。

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