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2011年6月 1日 (水)

『下女』のリメイク

かつて『下女』という幻の韓国映画があった。1960年に金綺泳(キム・ギヨン)監督が作った映画で、日本では1996年に初めて映画祭で上映されて、衝撃を与えた。そして、半世紀後にそのリメイクを韓国の中堅監督イム・サンスが撮ったという。今回の邦題は『ハウスメイド』で8月公開。

期待度が高すぎたせいか、おもしろかったが失望した、というのが正直な感想だ。豪邸を舞台にメイドが主人と関係を持って、次第に家庭を支配してゆくという物語は変わらないし、時代が変わってもスリリングだ。しかし、スタイリッシュになった分だけ、オリジナルにあったメイドの怨念は薄まった気もする。

今回の作品の舞台は、これまでに映画で見たことがないほどゴージャスで完璧な豪邸だ。主人はそこで朝食の時にピアノを弾き、妻はマティスなどの画集を手にしている。すべてを手にした男の余裕の振る舞いが実にさまになっていたが、私はそこにどこか滑稽さを感じた。日本を上回る経済大国になった素直な自信のようなものが感じられて、かつての日本みたいに思えたのだろうか。

その点オリジナルの方は、経済発展に向かう社会特有の成金趣味が何ともあざとく、リアルだった。メイドも貧しさが顔や動作に現れていて、見ていて怖くなった。

今回の作品は後半がかなり変えられているが、それはそれでおもしろい。特にもう一人の年配のメイドを登場させて、物語に広がりを持たせているのがうまい。最初はあまり感情を見せない彼女が、「ちくしょう」と大声を出して裸になるシーンなどはぞくぞくした。

結局、原作を見ていなければ十分におもしろい映画だったのだろう。

そういえば、オリジナル版を1996年に上映した時は、監督が来日した。最初は『下女』は傑作だから上映させないという監督の不思議な希望で、プログラムに入っていなかった。ところが監督本人がフィルムを持ってきて、急遽一回だけ上映が決まった。そんな状況で見たから、いよいよ神話的な作品に見えるのかもしれない。

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