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2011年6月 8日 (水)

ネットの「悪影響」

私くらいの年になると、若者に対する愚痴が多くなる。とくにネットに対しては、あらゆる「悪影響」を見つける。ネットばかり見て、他人と話さない。何でも検索して、本を読まない。ネットや携帯にお金をかけるので、映画を見に行ったり外食したりしない云々。果たしてこれらは正しいのか。橋本良明著『メディアと日本人』はその偏見を科学的に分析している。

科学的といっても、その手法は伝統的なアンケート調査の集計だ。しかし、いくつかの新しい発見があった。

ニュースを知るメディアとしては、2000年以降もテレビが圧倒的な地位を誇っており、ネット利用者が最も多い20代でも、テレビ51.4%に対して、ネットが44.4%だ。

新聞を読む時間は1995年以降、全世代で減少している。しかしこの5年間で見ると、10代、20代でネット利用時間は増えておらず、この世代に関してはネットが新聞の時間を奪ったわけではない。しかし信頼できるメディアという調査では、新聞の凋落がテレビや書籍に比べて最も激しい。確かに最近の新聞はおかしい。

この15年間、出版不況で書籍の販売額が減少していても、「読書離れ」というほどには読書時間は減少していない。

同じネットでもPCの利用が多い人は、携帯ネットを利用者よりも、政治的関心が断然高い。これは30代までの調査でもそうだから、ネットが政治的無関心にはつながらないということだ。

「世間のできごとより、自分の身の回りのできごとに興味がある」という調査結果は劇的だ。「はい」と答える人は60代の50%から若くなるにつれて次第に増えて、10代では80%がそうだ。若年層の「私生活主義」は1970年代前半にも指摘されたが、今の経済状況はその比ではない。そしてネットをPCで使う人の方が、この割合は低い。

携帯でメールを読む・書く時間は10代で49.9分、さらに携帯でサイトに書きこむ時間は10代で120.6分だ。「これほどの時間を携帯ネットに費やし、友人とのメール交換やSNSでの情報交換に励んでいれば、“世間”のことなど眼中になくなるのも無理はない」と結ぶ。

「まごまごしていると他人に追い越されそうだ、という不安を感じる」人は、60代で15%なのに、若くなるとどんどん増えて、10代では51%。「つながりを求めて、あるいは日常的なつながりを確認するために、時々刻々とネットにメッセージを書き込み、友人の動静を探る。メッセージをやりとりし続けなければ、自分が空になってしまいそうな予感」。大変な時代になった。

著者は結論としてネットがテレビの時間を奪っていないと書く。最も危ないのは新聞だろう。

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