『東電帝国 その失敗の本質』に暗くなる
いまや大きな本屋に行くと一番目立つところに「原発本」コーナーがあって、何十冊も平積みになっている。『原発のウソ』に続いて買ったのが、志村嘉一郎著『東電帝国 その失敗の本質』。理由は簡単で、著者とかつて面識があったからだ。
著者は元朝日新聞の経済部記者で、電力や石油などを担当していた。つまり元記者の暴露本だが、読んでいると暗い気持ちになる。東電がいかに大金を使ってメディアを操作したかが、克明に書かれているからだ。
「朝日が原発賛成に転向した日」という章がおもしろい。
1971年、福島原発の運転が始まった年に、電気事業連合会の広報部長に新聞記者出身者を引き抜き、記者の懐柔を始める。そして1974年7月から最もガードが固かった朝日新聞に1ページの意見広告を月一回の割合で載せ始める。すると他紙も一斉に欲しがって、地方紙にまで入れる。その金額は年間で10億円を超える。これで全新聞が原発容認となった。
ほかにもいろいろ暴露話があるが、読んでいて途中でいやになってしまった。人間が金の力でなんでもやるようになることが、えんえんと書かれているからだ。
そういえばこの本にも出ているが、読売の正力元オーナーは原発を日本に導入すべしと、1950年代からキャンペーンを張っていた。現在、そのことは読売新聞でどのように「総括」されているのだろうか。
ところで著者の志村氏と面識があると書いたが、先方はもちろん覚えていないだろう。とにかく威張っていて、すべてがオレ様口調だった。小さな政府系の団体にいた30歳前後の私はゴミ扱いだった。新聞記者は取材相手に似てくる場合が多いが、今思うと、彼自身も東電帝国の一角のように見える。
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