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2011年7月 9日 (土)

『フランス映画はどこへ行く』はおもしろい

新聞記者の友人に勧められて読んだ林瑞絵著『フランス映画はどこへ行く』がおもしろかった。現代のフランス映画については少しはくわしいつもりでいたが、どうも核心の産業の部分がわからなくて隔靴掻痒の思いがあった。それがこの本ですべて解決、という感じ。

冒頭の国民一人あたりの映画を見る回数が、日本は1.26回、フランスは3.06回、韓国は3回、アメリカは4.47回という数字に思わず唸ってしまった。この本はこうした数字のデータが多くて役にたつ。フランスも日本と同じく、1970年頃から入場者数は2億人弱だが、違うのはともに最盛期の1950年代後半は、日本の11億人をはるかに下回る4億人だ。

国立映画センターの予算は円で600~700億。うち半分がテレビに使われるとは知らなかった。同センターの収入は映画のチケットの入場料の1割が回ることは知っていたが、それは全予算の2割に過ぎず、7割はテレビから来ている(売り上げの5.5%を収める)ことも知らなかった。そしてもちろん製作にはテレビの出資があり、それは全体の半分に及ぶ。まさにおんぶに抱っこだ。

テレビの支配を背景に、外国では上映されないコメディ映画が次々と作られる。主役はテレビのお笑いタレントとスーパーモデル出身の女優ばかりだ。そうして彼らは監督業にも手を出す。

フランスだけの制度で、映画見放題パスがある。これも知ってはいたが詳細がようやくわかった。月約2500円を一年分払うと、そのチェーンの映画館が見放題になるというもの。今では年間30万枚も売れているという。このパスを持った人は、暇があるとパスの系列シネコンに行って、話題の映画を片っ端から見るという。パスの使えないアート系映画館には人が行かなくなった。日本でこの制度を東宝シネマズなどがやりだしたら、フランス以上に大変なことになるだろうな。

この本で最もおもしろいのは、「カイエ的な示し合せに気をつけろ」という部分だ。「カイエ・デュ・シネマ」誌の評論家は、一度いいと決めたら駄作でも評価する原理的作家主義だ。この雑誌出身の評論家は、ほかの雑誌や新聞に移っても同じ態度を続ける。これがフランスの映画批評をおかしくしているというもので、全く同感だ。

ほかにもおもしろい点はたくさんあるが、これは後日。いずれにしても目から鱗で、新聞はこんな人のレポートを数か月に一回載せてくれたらいいのにと思う。

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