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2011年8月29日 (月)

泣かせる邦画はどうも

最近の邦画は、何よりもまず泣かせようと工夫を凝らしているものが多い。現在公開中の『日輪の遺産』も、11月公開の『アントキノイノチ』も、丁寧に作られた力作だが、ちょっと構成が凝りすぎで引いてしまった。

『日輪の遺産』の佐々部清監督の演出は、手堅い。特に財宝を地下壕に運び込む少女たちを描いた、多摩を舞台にしたシーンは、かなり丁寧にできている。堺雅人や中村獅童、ユースケ・サンタマリアといった個性派俳優たちが抑制の効いた渋い演技を見せる。それが女学生たちが日の丸の鉢巻きをして一斉に敬礼をするといった、いかにも「けなげ」な場面に収斂されたのが惜しかった。それは泣けてしまうけど。

その場面を取り巻く枠組みは、どこか嘘っぽい。このような話に陸軍大臣たちの会議の場面は必要だろうか。さらにこれを現代の場面が取り囲む。映画の冒頭は怪しげな日系人の回想だし、それから日本の中学校の卒業式に移り、八千草薫が出てくる。それから戦時中が始まって、ラストに現代に戻る。そのわざとらしい構成は、この映画の品位を下げているように思った。佐々部監督の『出口のない海』もそうだが、戦争映画は現代を入れたとたんに安っぽくなる場合が多い。

『アントキノイノチ』もまた、構成がつらい。遺品整理の会社に就職した元鬱病の青年(岡田将生)と職場で出会う女性(榮倉奈々)の話で十分におもしろいのに、途中で執拗に出てくる岡田の高校時代の話は余計に思える。遺品整理の仕事の中に十分に大きなドラマがあるのに、主人公たちの過去が重すぎるのだ。それに加えて海岸で二人が「元気ですかー」と叫んだり、青春映画らしさが無理やり付け加えられている。

それでも、瀬々敬久監督が捉える風景や人物は秀逸だ。遺品の現場はどこも丁寧に選び取られているし、手持ちのカメラが捉える映像は、時折とんでもない輝きを見せる。例えば、お台場の観覧車があれほど美しく見えた映画があっただろうか。そして夜のお台場からのバスに乗った榮倉が、窓から顔を出す場面の生々しさといったら。あるいは、留守番電話の伝言を聞きながら、亡くなった妻を思い出す柄本明の慟哭の迫力。この監督が今、乗りに乗っているのがよくわかる。

瀬々監督らしい演出は十分に味わえるので見て損はないが、どこか脚本に無理がある。榮倉が迎えるラストに至っては、開いた口がふさがらなかった。この監督はオリジナル脚本で撮ってほしい。

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