ジャンル映画の楽しみ
いわゆる「ジャンル映画」は楽しい。西部劇にせよ、ホラーにせよ、何十回も同じネタで繰り返してきた中から生まれた不思議なありがたみがある。ともに9月17日公開の『ラビット・ホラー3D』と『女と銃と荒野の麺屋』を見ながら、そんなことを考えた。
『ラビット・ホラー3D』は清水崇監督の新作だ。最初はいかにも安物のホラーのように始まるが、弟が映画館で3Dの映画を見ながら、飛び出してきたウサギを持って帰るあたりから、怖くなる。弟の存在自体が、姉の妄想かもしれないと思い出すと、果てしのない地獄に堕ちてゆくようだ。ラストに出てくる無限のらせん階段のように。
それにしても、学校に現れるぬいぐるみのウサギがあんなに怖いとは思わなかった。映画の中の映画、映画の中の夢や妄想、あるいは父親の作る飛び出す絵本と3Dなど、映画の自己言及が幾重にも重なって、見ていると根源的な不安を掻き立てられる。3D自体をからかっているようにも見えた。
ところで撮影はクリストファー・ドイルだが、彼らしいショットはほとんどなかった。
『女と銃と荒野の麺屋』は題名だけで何事かと思うが、チャン・イーモウの新作だった。一応コーエン兄弟の『ブラッド・シンプル』のリメイクらしいが、西部劇のようでフィルムノワールの感じもあり、ドタバタ喜劇も見せてくれるので、ジャンルの混交を楽しむ珍品だ。
舞台は中国の荒野の町。空は絵の具のように青く、赤茶色の山が生える。そこに出てくるのは、緑や青や赤の原色の衣装を着た6人。みんな顔を見ただけで笑ってしまう。一応、不倫ををめぐる話はあるが、何かあると刃物とピストルが飛び交う。見ていると滅茶苦茶な物語にずいぶん困惑するが、見終わるとバカらしくておもしろかった気分になる。4人が踊りながら麺の生地を作る華麗な場面だけでも、一見の価値があるだろう。
『ラビット・ホラー』は83分、『女と銃と荒野の麺屋』は90分。近頃には珍しいこの短さが、ジャンル映画らしくていい。そういえば現在ヒット中の『大鹿村騒動記』は90分だった。
| 固定リンク
「映画」カテゴリの記事
- 『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は不思議なSF(2026.04.08)
- 初期アサイヤスに震える:続き『無秩序』(2026.04.12)
- 『自然は君に何を語るのか』の自然とは(2026.04.04)
- 『金子文子』の迫力(2026.03.31)


コメント