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2011年8月 1日 (月)

『ゴモラ』に再び驚く

今年はイタリア映画の傑作の公開が続く。ベロッキオの『愛の勝利を』に続いて、マテオ・ガッローネ監督の『ゴモラ』がこの秋に公開される。2008年のカンヌでグランプリを取ってから、3年もたっているが。既に「イタリア映画祭2009」で見ていたが、再見して改めて驚いた。

冒頭の日焼けサロンで、一挙に数人を銃殺するシーンに始まって、「暗澹」という言葉がこれほどぴったりな映画を知らない。全編に鳴り響くのは、銃声とユーロ紙幣を数える音。舞台は南イタリアで、カモッラという犯罪組織に操られる人々をオムニバス方式で描くのだが、なぜかそれが、他人事とは思えない。

郊外に建てられた古びた集合住宅で3つの物語が進行する。少年トトは、八百屋の手伝いをしているが、次第にカモッラ組織の一員となる。マルコとチーロは組織の武器を盗んで、その仕返しを受ける。ドン・チーロは組織の集金係だが、敵対する組織との抗争に巻き込まれる。絶えず聞こえる銃声や叫び声の中で、結婚式をしている家族さえあるという現実。

住宅の外で展開する物語が2つ。パスクワーレは、イタリアのファッションブランドの下請け工場で働いているが、中国人に闇で縫製を教えて金を稼ぐことを覚える。そこにカモッラの復讐が待っている。青年ロベルトは、産廃業者のフランコのもとで働き始めるが、彼が見たのは欧州中の産廃を買い取って、勝手に埋める大人たちだった。

組織に操られ、翻弄される人々を手持ちのカメラが生々しく追いかける。みんなが何かを恐れ、おびえながら暮らしている。映画を見ているうちにその不安が体感として伝わってきて、「暗澹」たる気持ちになる。終わった時には、心臓の鼓動が異常に高まっていた。

考えてみたら、今年はイタリア映画の当たり年だ。『愛の勝利を』と『ゴモラ』がその代表格で、作家性の強い『4つのいのち』と『プッチーニの愛人』もイタリア映画の幅の広さを見せてくれた。現在上映中の『人生、ここにあり!』は、笑わせて泣かせてくれる秀作だし、10月に公開される『やがて来る者へ』はネオリアリズモを継承する1本だ。そのすべてに共通して流れるのは、強烈な政治性ではないだろうか。


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