夏は鱧
小津安二郎の遺作『秋刀魚の味』に、東野英治郎が「さかなへんにゆたかと書いて、ハモ」と言う場面がある。出世した教え子に囲まれたかつての中学教師の悲哀を一言であらわす名セリフだが、この映画を最初に見た時は大学生で、もちろんハモ=鱧は食べたことがなかった。ところがいつの頃からか、夏に食べたい料理の一番になった。
淡泊だがじゃりっとした不思議な食感が、夏にあう。今年は食べていないなと友人に伝えたら、「あそこならいい鱧を出すのでは」と連れていってくれたのが、六本木の「たか野」。
いかにも一見さんお断り風の入口だが、中は特に高級な感じではない。いわゆる京料理の店で、コースの中に鱧料理を入れてもらった。鱧と言えば、もちろん京都である。おばんさい3品などの後に、いよいよ鱧の湯引きを梅肉ソースで食べる。しっかり身のしまった鱧で、梅の味が爽やか。日本酒をたくさん飲んだので、その後は何を食べたか覚えていない。
何気ない料理がどれもおいしく、いかにも大人向けの落ち着いた店だった。コース以外の単品や酒はメニューに値段も書いていない、という類だ。お金のことを考えずに気の置けない友人たちと楽しく飲む、しかし実はそんなに高くない。こんな店をもっと知りたいと思う。
かつて神楽坂においしい鱧料理を出す「千代田」という店があったのを思い出した。ここの鱧尽くしは最高だった。板前さんが病気になって数年前につぶれて、今はピザ屋になって繁盛している。
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コメント
私もこの店で初めて鱧を食べました。梅肉をつけた鱧の美しさ、
淡白で上品な味、独特な食感。大好きになりました。
お勧めで蒲焼にしてもらったら、これが美味。
秋は松茸をいただきます。土瓶蒸しがいいですね。それからフライ。
冬は河豚ですよね。河豚鍋をお願いすると雑炊まで食べて
幸せいっぱい。
春は筍、美味しいものがいっぱいです。
投稿: ワーズワース | 2013年10月20日 (日) 22時05分