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2011年9月 6日 (火)

つぶれそうなベネチア国際映画祭:その(4)

今回の映画祭で、まぎれもない傑作を見た。シャンタル・アケルマンの「オルメイヤーの阿房宮」La folie Almayerで、コンペ外の招待作品だから、誰も日本人は見ていないようだ(というより、日本の新聞記者たちは監督の名前も知らなかった)。一言で言うと、マルグリット・デュラスとクレール・ドニとアビチャッポンを足して割ったような作品である。

ジョセフ・コンラッドの同名小説を映画化したもので、東南アジアに住む欧州人オルマイヤーが、現地の女との間にできた娘ニナを巡って悩むという話だ。ハーフのニナは欧州の学校に入ってもいじめられて、戻ってくる。そして好きでもない現地の男性と共に家を出る。

それだけの話だが、デュラスの映画にあるような植民地への甘美なノスタルジーに、ドニの植民地に対する後ろめたさや後悔、さらにアビチャッポンの映画に出てくる森や現地民の神話的世界が合わさって、どのシーンも光り輝く。冒頭の波のシーンに続いて、男性歌手が殺されて、ダンサーのニナの顔がアップになるあたりから、画面にとんでもない緊張感が生まれてくる。

もう一本、コンペのトッド・ソロンズ「ダーク・ハウス」Dark Houseもまた、彼にしかできない摩訶不思議な映画だ。いつものように病んだアメリカというか、30過ぎの結婚できないオタクな男エイブを中心に、どこか歪んだ人々をアイロニーたっぷりに描く。エイブの両親がミア・ファローとクリストファー・ウォーケンで、彼らが出てくるだけでおかしい。

これまでの彼の映画と違って、レイプやオナニーや近親相姦などはない。しかし全員どこか変だ。ダイエット・コークを飲み、トイザラスで買ったおもちゃに傷があったと文句を言いに行く子供のようなエイブを、自分の会社で雇う父親。そこに勤める秘書の中年女性は実は大金持ちで、会社の若者に手をつけ、エイブも惹かれている。実はすべてがエイブの夢だったのではないかと思わせるような、悪夢のようにも思えてくる映画だ。

2本とも日本での配給は難しいかもしれないが、せめて東京国際映画祭などで上映してほしい。

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