« つぶれそうなベネチア国際映画祭:その(5) | トップページ | つぶれそうなベネチア国際映画祭:その(7) »

2011年9月 8日 (木)

つぶれそうなベネチア国際映画祭:その(6)

園子温監督の『ヒミズ』が上映された。私は公式上映ではなく前日のプレス向け上映を見たが、たぶん賞は無理だと思う。途中で席を立つ人が数十人はいたし、終わった後に拍手の後に小さめのブーイングもあった。

プレス向けで数十人が席を立つのは珍しくないが、ブーイングはあまりない。ブーイングが出るのは作品のできが悪い時ではなく、ある種の不快感を催させた時だ。今回のコンペでは、フィリップ・ガレルの「情熱の夏」はもっとすごかった。では『ヒミズ』はなぜ起きたか。

一番は、子供への暴力だろう。特に女の子を何度も殴るのは、特に西洋では見たくない人が多い。そして親を殺したり、バスで知らない人に切りつける暴力もそうだ。
それから、地震の瓦礫とこの映画の物語の本質的な部分がずれていることからくるあざとさもある。それをモーツァルトの「レクイエム」やサミュエル・バーバーの「弦楽器のためのアダージョ」のような、西洋人の多くが知っている名曲を、何度も何度も流して無理やりくっつけるような強引さ。
大震災のような深刻な問題をこんなにハチャメチャな映画の背景に使い、子供に暴力を繰り返し、西洋のクラシックまで動員することに、違和感を感じた人がいたのではないか。

園監督の映画は、社会に適応できない変人たちが、勢いで何でもやってしまって物語を自由に進めていくおもしろさがある。今回も、中学生二人の何を考えているのかわからない無鉄砲な生き方は迫力があったし、男の子が住む池のほとりの家やまわりの風景も良かった。周りに集まっている大人たちもみんなおもしろかったが、それが震災後のテント暮らしというのが、どこか違うような気がした。
家の中のろうそくや、庭に飾った電球、遠くの光などが照らし出す家や池、そしてそこで暮らす二人の妥協をしない生き方は、なかなか感動的だった。一風変わった青春映画としての出来は悪くないのに、震災が混じったことで私にもどこか留保が生じた。

ただ、こうして毎年ベネチアの20本くらいのコンペに日本映画が出続けていることは、すごいことだと思うべきだろう。

個人的にはその前の作品『恋の罪』よりも好きだが、『冷たい熱帯魚』には遠く及ばないと思う。11月公開の『恋の罪』については後日書く。

|

« つぶれそうなベネチア国際映画祭:その(5) | トップページ | つぶれそうなベネチア国際映画祭:その(7) »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/52671301

この記事へのトラックバック一覧です: つぶれそうなベネチア国際映画祭:その(6):

« つぶれそうなベネチア国際映画祭:その(5) | トップページ | つぶれそうなベネチア国際映画祭:その(7) »