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2011年9月 9日 (金)

つぶれそうなベネチア国際映画祭:その(7)

実は既に都合でベネチアは離れたが、もう1回だけ書く。イタリア映画「動かぬ大地」とベルギー映画「インベイダー」の2本がアフリカからの不法移民をテーマにしたものだったと書いたが、ほかにも同じテーマの作品がイタリア映画で2本あった。1本は、コンペ外の招待で巨匠エルマンノ・オルミの「紙の旅」Il viaggio di cartone。

オルミの映画は、古くなった教会からキリスト像や絵画などが運び出されることに立ち会う老牧師が主人公だ。教会にクレーンが入ってくる冒頭のシーンは、『ポー川のひかり』の最後を思い起こさせる。しかしこの映画では、何もなくなった教会に不法入国のアフリカ人たちが入ってくる。

ミカエル・ロンダル演じる牧師は、すべてがなくなることで、新しい宗教的な境地に達する。そしてそこに現れたアフリカ人たちを守る。しかしそこには警察の手が伸びて、アフリカ人たちはフランスへ向かう。教会の中と牧師の部屋だけが舞台の室内劇だが、さすがにオルミの神秘的な映像があちこちに見える。ただアフリカ人たちの存在があまりにリアルだったので、『ポー川のひかり』のような宗教性はなかなか伝わってこなかった。ルトガー・ハウアーがなぜか老牧師をさとす中年の牧師役を演じていた。

もう1本は「コントロカンポ・イタリアーノ」部門に出た、中堅フランチェスコ・パティエルノ監督の『別世界の話』Cose dell'altro mondo。こちらは、ある日突然移民がいなくなったらという仮定のコメディだ。正式上映で見たが、ディエゴ・アヴァンタントゥーノ、ヴァレリア・マスタンドレア、ヴァレンティ-ナ・ロドヴィーナというイタリアでは有名な俳優たちが演じていたので、会場は大盛り上がりだった。日本のイタリア映画祭でやるのは適した作品だろう。

4本もあると、今年の隠れたテーマは「不法移民」になるかもしれない。いずれにしろ、この問題が欧州を揺るがせているのは間違いないだろう。

最後に作品と関係ないことを一つ。映画を見ながら携帯やスマートフォンに電源を入れる人は、日本でもシネコンで時々見るが、まず映画祭ではない。ところがベネチア国際映画祭でその多いことといったら。今年は始まる前は携帯を見ている人を注意していたが、始まったらやりたい放題だ。欲望のままに生きる国民性は、こういう場合、どうしようもない。

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